• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

意見文の談話展開と表現技法の特徴についての日中対照研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K02822
研究機関順天堂大学

研究代表者

大野 早苗  順天堂大学, スポーツ健康科学部, 先任准教授 (40364955)

研究分担者 莊 嚴  秀明大学, 観光ビジネス学部, 准教授 (70348415)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード意見文 / 談話展開 / 表現技巧 / 日中対照研究
研究実績の概要

2016年度は、主に意見文の日中対照研究のための基礎となる情報を得るため、日中の中等教育機関で、書くことについて、どのような指導が行われるかについて調査を行い、その成果を発表した。調査にあたっては、中学校(初級中学)については、1~3年(7~9年)の国語(語文)を、高等学校(高級中学)については、日本の必修科目である国語総合と中国の必修教科である語文を取り上げた。
まず、日本の学習指導要領と中国の課程標準から、書くことの指導の目標や方法を比較してみると、中学校、高等学校を通して、目的や必要、意図に応じて書くことを目標にしている点は共通している。日常生活や社会に目を向け観察することを指導する点も共通しているが、中国では、人生を考えることも指導に含まれており、内容面で違いがあることがうかがわれた。活動については、材料の収集や構想、文章の推敲や他者との共有が大事にされる点が共通しているが、中国においては、文種や表現様式の書き換えなど、多様な練習方法に言及されていることが特徴的である。また、日本では、書くことの指導に割く時間の目安が示されるのみだが、中国では、作文の分量や速度についての具体的な規定があり、相当の分量を書くことが要求されていることがわかる。
教科書については、日中ともに検定制を採っており、複数の教科書が発行されているが、それぞれの国での採択率、占有率が高いものを各学年1冊ずつ選び、分析を行った。日中ともに、基本的な技術(順序や流、語句の選択など)に関する解説、見直しや推敲などの活動が盛り込まれている点で共通している。一方、書くことの課題数には大きな違いがあり、中国の教科書では、中高で合計331であったが、日本の教科書では47であった。課題内容の配置にも違いがあり、中国では学年、学期によって集中的に特定の書き方や文種を扱っているが、日本では各学年に様々な文種が分布している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成28年度は、まず、意見文の日中対照研究のための基礎的な資料とするべく、日本と中国の中等教育機関における国語教育における書くことの指導の内容を調査した。主に、日本の学習指導要領、中国の課程標準、日中それぞれの国語(語文)教科書を分析の対象とした。さらに、市販の意見文参考書も入手し、参考資料とした。調査の結果、書くことの指導の目標や方法には日中間に共通点も多いものの、中国のほうが生徒に要求する作文の量が多く、また、書くための練習の方法も多様であること、内容面でもより広がりがあることがわかった。
次に、本調査に向けて、課題設定のための予備調査を行った。予備調査では、まず、日中の大学入試における小論文では、どのような出題がなされる傾向にあるかを調べ、それをもとに、日中で情報量の多寡等が現れにくいトピックを選んだ。さらに、課題を示す文のあり方が意見文の構成等に影響を与えると考えられるため、同一トピックで複数の課題を作成し、日本人大学生と中国人留学生を対象にパイロットスタディを行った。その結果を用いて適切な課題のあり方を検討し、本調査で用いる課題の日本語版と中国語版を決定した。
年度末には、当初予定のとおり、中国の大学に通う中国人学生を対象として本調査を開始した。中国国内で中等教育を受けた大学生30名に課題に基づく中国語の意見文を書かせ、さらに分析の際の参考とするために、意見文執筆に関するアンケートに回答してもらった。集められた意見文は、それぞれを構成要素に分割し、その内容のコーディングに着手している。

今後の研究の推進方策

今年度は、前年度末に開始した本調査を継続して行う。日本の大学に通う日本人学生の意見文を収集するとともに、研究代表者、研究分担者の所属する大学の休業期間を利用して、中国の大学に通う中国人学生の意見文をさらに収集する予定である。
それに並行して、意見文の分析を進める。既に意見文を構成要素に分割し、内容をコーディングする作業に着手しているが、日中の学生が受けてきた教育や背景として持つ文化を考慮した分析を行い、考察を深めるために、研究代表者、研究分担者がコーディングに関する研修等に参加し、知識と技能を高めることを計画に加える。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた主たる理由は、中国の書店に注文し配送を依頼する予定であった書籍の多くを本調査実施のための中国訪問時に購入し、研究代表者と研究分担者が自ら持ち帰ったことである。また、中国での本調査実施に際して協力、情報提供を依頼した現地大学教員の人数が予定より少なくなったため、謝金の支出が減ったことも次年度使用額が生じた理由の1つである。

次年度使用額の使用計画

研究を計画した当初は、中国語で書かれた意見文の日本語への翻訳をアルバイト学生と研究分担者が担当する予定であったが、中日翻訳を専門とする業者に業務委託することによって翻訳の正確さと研究遂行の効率の向上が見込めることが判明した。そのため、次年度使用額は主に翻訳のための業務委託に当てる予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 中等教育で教えられる書くことの日中比較―「学習指導要領」と「課程標準」及び必修の国語教科書を中心に―2016

    • 著者名/発表者名
      莊嚴・大野早苗
    • 学会等名
      中国語教育学会2016年度第1回研究会
    • 発表場所
      早稲田大学(東京都新宿区)
    • 年月日
      2016-10-22

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi