研究課題/領域番号 |
16K02829
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
古川 智樹 関西大学, 国際部, 准教授 (60614617)
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研究分担者 |
手塚 まゆ子 関西大学, 国際教育センター, 留学生別科特任常勤講師 (90734260)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 反転授業 / 予習講義動画 / 文法教育 / eラーニング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は未だ研究が進んでいない日本語教育における反転授業の有効性を検証し、反転授業学習モデルを構築することである。本年度は、初中級から上級の全てのクラスの文法学習において反転授業を実施し、どの程度学習効果が見られたのか(あるいは見られなかったのか)、学習成果分析及び授業期間終了後にアンケート調査、半構造化インタビュー調査を行った。 その結果、学習成果分析において、まずアクセスログによる講義動画視聴率では、全体的に視聴率は時間の経過とともに下がっていくものの、平均して約75%の視聴率を維持しており、講義動画視聴率と学期終了後の到達度確認テストとの相関では全クラス平均で0.52あり、講義動画を視聴している学習者は到達度テストでも高得点を得ていることがわかった。また、反転授業未実施時と実施時で到達度確認テストの平均値に差が見られるかどうかt検定を行った結果、全てのクラスにおいて有意差が見られ、反転授業実施時の方が有意に高かった。 そして、アンケート調査においては、学習者は講義動画を高く評価しており、それらによって文法の理解度が高まり、授業にも入りやすくなったという意見が多数を占めていた。しかし一方で、予習に費やす学習時間の確保が難しいこと、動画の速度が遅い等のインフラ環境の未整備による学習意欲の低下等の問題があることがわかった。また、半構造化インタビュー調査では、得られたデータをSCAT法を用いて学習者の反転授業に対する評価と学習意識の変容について分析を行った結果、学習者は反転授業に対して初めは教育方法の変化による戸惑いがあるものの、徐々に能動的学習を中心とする反転授業の授業形態に慣れ、質問を持って授業に参加できる、授業での理解が促進される等、予習の重要性に気づき、さらに能動的な学習が自身の日本語能力を向上させるという学習観の変化が起こっていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目的は、日本語教育において反転授業がどのように有効に機能しうるのか、反転授業未実施時と実施時の到達度確認テストの比較分析やアクセスログによる講義動画視聴率と到達度確認テストとの相関分析等の数量的分析とアンケート及び半構造化インタビューによる質的分析を行うことによって効果を検証し、その有効性を明らかにするとともに、日本語教育における反転授業学習モデルを構築することである。 本年度は、調査の1年目として、上記目的を達成するために、予習として用いる文法の予習動画を作成し、初中級から上級までの全クラスにおいて反転授業を実施した。そして、学期末にアクセスログ、到達度確認テスト及びアンケート結果のデータを取得し、分析を行った。また、インタビュー調査に関してはデータ収集を年間を通して行い、得られたデータの文字化作業も終了し、分析に入っている。本年度は以上の調査から、予習動画の視聴状況及び到達度確認テストとの相関、反転授業未実施時との比較を行い、アンケート及びインタビュー調査データも問題なく順調に取得できていることから当初の計画通り、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降(平成29年度、30年度)は、本年度(平成28年度)に得られたデータをもとに、データの信頼性を上げるため、データ収集を引き続き行い、それらを基に分析を行っていく予定である。 具体的には、講義動画視聴率、到達度確認テスト、反転授業に関するアンケート調査による学習成果分析(量的分析)とModified Grounded Theory Approach(M-GTA)による半構造化インタビュー分析を中心に進めていく。まず、学習成果分析では、日本語学習者がどの程度予習として講義動画を事前に視聴するのか、そして、講義動画視聴率と到達度確認テストの間にどの程度の相関が見られ、講義動画を見ている学習者と見ていない学習者ではどの程度の差が見られるのかをデータ量を増やして分析することによって反転授業の効果検証を行い、また、アンケート及び講義動画視聴率、到達度確認テスト結果を基に、どのような学習者が反転授業を肯定的に受け止め、積極的に利用しているか、また反対に、どのような学習者が否定的に受け止め、どのような要因が学習の足かせ(障害)となっているのか、学習者特性についても明らかにしていく。次に、半構造化インタビュー分析では、学習者が反転授業における予習動画をどのように活用しているのか、また、反転授業を行う前後で学習者の学習プロセス及び学習に対する意識がどのように変容しているのかを明らかにしていく。 以上の分析結果及び研究成果は、随時学会等で発表を行い、フィードバックを得ながら、研究を推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた学会発表が大学業務で出席できなくなり、その旅費分が余ったため、次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の学会発表で当初は予定していなかったヨーロッパでの学会発表に採択されたため、その旅費として使用する予定である。
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