本年度は、昨年度に引き続き、初中級から上級の全てのクラスの文法学習において反転授業を実施し、データ数を増やしていくことによってこれまでの分析の信頼性・精度を高めるとともに、総合的な反転授業の効果検証及び反転授業学習モデルの構築を行った。 結果としては、まず反転授業による学習効果に関しては、反転授業実施前、実施後の到達度テストの結果においてt検定を行った結果、すべてのクラスにおいて反転授業実施後のほうが有意に高かった。次に日本語学習者の学習者特性が,反転授業実施時に課題とする予習動画視聴及び到達度テスト等の学習成果及び反転授業評価にいかに影響を与えるのか,学習者特性の影響要因を構造方程式モデルを用いて分析した結果に関しては、「講義動画理解度/講義動画時間/e-learning評価」が「講義動画評価」に,「講義動画評価」が「予習課題評価」に影響を与え,また,「PCの得意/不得意」が「インターネット使用時間」に影響を与えていることがわかった。そして,「講義動画視聴率」は上記の「予習課題評価/学習レベル/インターネット使用時間」が直接的な影響要因となっており,その「講義動画視聴率」が「到達度テスト得点」に影響を及ぼしていることがわかった。 また、反転授業実施前と実施後の授業分析を行った結果、反転授業によって約5-10分の文型の導入時間が省略できており、その省略した時間で意味の確認や練習問題を充てたり、グループワークを取り入れることで、学習者に新出文型の用法について考えさせる時間の確保や発話機会の増加も見込めることがわかった。 最後に、反転授業学習モデルとしては、導入動画に文作成等の練習問題も加えた予習を課し、対面授業ではグループワーク等によって発話・質問の機会を増やし、その後eラーニング等によって知識の定着を図る教育方法が最も効果的であると結論付けることができた。
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