研究実績の概要 |
研究成果発表の国際競争激化を背景として大学院生への高度な学術英語を指導する科目提供の必要性に鑑み、本研究では分野横断的な観点からの大学院共通教育レベルにおける学術英語教育を研究課題とした。研究目的として(1)日本の大学における大学院学術英語教育の現状把握、(2)研究者が所属する大阪府立大学における大学院学術英語教育に関する授業の開始と発展、(3)大学院共通教育学術英語のカリキュラムモデルの提示、を掲げた。 最終年度においては、(2)について4年間のライティング授業実践を振り返り、成功した点と今後改善が必要な点を整理した。応用言語学において議論される、英語学術論文の各セクションの構成的、言語的特徴を明示的に指導するジャンルアプローチ(e.g., Hyland, 2004, 2007)と、それにもとづくルーブリックを開発しライティングを評価することが効果的な指導法であるとの結論に至った。しかしながら、授業を取る学生のモチベーション、英語力、英語学習に費やす時間と労力などにも注目すると、ジャンルアプローチだけでは授業の成功に至らないこともわかり、教員と学習者のコンテクストを中心に考えるエコロジー的視点(Tudor, 2003)という教育概念が必要になるという理解に至った。 4年間の研究実績としては、(2)の大学院英語ライティング授業での取り組みを2本の論文と1本の授業報告および国内外5回の学会にて発表した。(1)の他大学の現状については、資料分析の結果、個々の大学で大学院英語授業の内容の差が大きく、さらに担当教員も様々な分野から来ていることがわかった。その結果、(3)のカリキュラムモデルについては、各分野のアカデミックライティングに応用可能なジャンルアプローチをもとに、授業のコンテクストを重視し、担当教員が日々の実践を振り返ることを促す教育モデルを提案した。
|