研究課題/領域番号 |
16K02852
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
遠山 菊夫 杏林大学, 外国語学部, 教授 (80265777)
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研究分担者 |
倉林 秀男 杏林大学, 外国語学部, 准教授 (00407066)
八木橋 宏勇 杏林大学, 外国語学部, 准教授 (40453526)
楠家 重敏 杏林大学, 外国語学部, 教授 (40139069)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 言語学 / 社会学 / 歴史学 / 英語教育法 / 伝統社会 / ポスト伝統社会 / 言語と文化 / コミュニケーション |
研究実績の概要 |
同時並行で進めている、①伝統的心性がコミュニケーションのあり方に与える影響についての基礎的研究、②伝統的心性についての自覚を通じて「異文化コーディネーター」として成長させる応用的研究、それぞれの研究実績は以下の通りである。 基礎的研究のうち「様々な時代の英語資料における社交、儀礼など様々な状況の相互行為の言語的・非言語的特徴についての言語学的・社会学的分析」に関して、遠山は、古英語・中英語資料に焦点を絞り、Anthony Giddensが「伝統」と結び付けた「真理の定式化した観念」の言語的表徴とは「格言的表現」に他ならず、その歴史的変化は食事や衣装に係る作法の変容と並行関係を成すことを、学会発表を通じて明らかにした。同時に、「伝統社会」のこうしたコミュニケーション様式の、「ポスト伝統社会」における継承・変容・消滅・復活の可能性について招待講演において触れた。 倉林は、基礎的研究と応用的研究を結び付けつけるための準備として必要不可欠な分析を幅広く行った。基礎的研究に関しては、文化とスタイルの英語らしさ、小説言語の分析、応用的研究に関しては、英語教育と英語文学教育の接点という、それぞれのテーマに関して精力的に学会発表と論文によって深めた。 八木橋は、応用的研究のうち「話者の異文化が英語の話題の選択に与える影響を極小化する具体的方法の案出」を目指し、日英語の論理構造の違いに焦点を当て所属学会のワークショップで研究発表を行い、その成果を共著論文筆頭者として纏め、同時にこの分野の基礎的研究も進めた。 楠家は、基礎的研究のうち「幕末期から明治初期の日英間の外交文書の分析による互いを尊重し合うコミュニケーションのあり方の模索の歴史に関する今日的な再評価」に関して、英国における日本観の変遷と現状について現地調査を行いながら、招待講演や論文を経て、単著の『幕末の言語革命』として纏めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1 基礎的研究について (1)相互作用を通じて変化が生じる動的プロセスの構造についての考察については、倉林の成果によって、おおむね順調に進展している。(2)諸言語によって異なる「ディスコースレベルの好まれる構造・話題」の考察については、八木橋の成果によって、おおむね順調に進展している。(3)異文化交流を通じて互いを尊重し合うコミュニケーションのあり方を模索してきた歴史の考察については、楠家の成果によって、当初の計画以上に進展している。(4)伝統的心性がそのコミュニケーションのあり方に与える影響についての語用論的観点からの分析については、遠山の成果によって、当初の計画以上に進展している。 2 応用的研究について (1)異文化接触・受容モデルを日本人学生と外国人留学生の英語による異文化交流に応用する具体的方法については、倉林の成果によって、当初の計画以上に進展している。(2)話者の異文化が英語の話題の選択に与える影響を極小化する具体的方法については、八木橋の成果によって、当初の計画以上に進展している。(3)授業実験での素材となる世界各地の季節的行事に関するコンテンツの準備は、遅れている。(4)「ポライトネス」という概念だけではカバーしきれない配慮表現を持つ母語の干渉によって英語による対話が不自然な状態に陥らないために、その影響の排除法についての考察を加えた上での、上記の三点との統合については、やや遅れている。 上記の8項目の進捗状況を総合的に判断すると、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
1 今後の推進方策 上に記した通り、現在までの進捗状況は、総合的に判断すると、おおむね順調に進展していると評価できるが、全体のバランスにはやや不均衡が生じていることは否めない。今後の推進方法としては、以下に示す通り、応用的研究の遅れが見られる項目の改善を図ることが第一だと考える。 2 研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での課題等、その対応策 研究を遂行する上で、まず、応用的研究の(3)授業実験での素材となる世界各地の季節的行事に関するコンテンツの整備が、喫緊の課題であると言えよう。これについては、楠家の提案を軸に、遠山、倉林、八木橋がより連携を密にして、具体的な展開を図ることで解決出来ると考えている。 また、申請時の計画では、基礎的研究について、コミュニケーションの前提となる「連帯」と「協業」のあり方に関する考察を軸として一定の結論を得ることを想定していたが、29年度にこの点を深めることは、時間的に困難であると判断せざるを得ない。これは、「真理の定式化した観念」の言語的表徴としての「格言的表現」に関して、遠山が中心に行っている言語学的・社会学的分析とその成果の発表のために、なお時間を要するためである。このため、これに関連する応用的研究にも若干の遅れが生じるが、これらについては、30年度に集中して研究を進め、遅れを取り戻したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度は、人件費および謝金が全く発生しなかったためである。これは、当該年度は、基礎的研究の推進が中心となったため、応用的研究の授業実験実施に遅れが生じ、それに係る人件費・謝金の執行ができなかったことに拠る。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度の物品費(書籍購入費用)に充当する予定。
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