研究課題/領域番号 |
16K02863
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
湯川 笑子 立命館大学, 文学部, 教授 (30309075)
|
研究分担者 |
清田 淳子 立命館大学, 文学部, 教授 (30401582)
庵逧 由香 立命館大学, 文学部, 教授 (70460714)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | EMI / キャンパスアジア / 英語開講 / トランス・ランゲージング / 日中韓 / 教授ストラテジー / マルチリンガリズム / バイリンガリズム |
研究実績の概要 |
大学のEMI授業の研究については、2つのEMI教養科目を選んで、1学期間の授業を事情のある時を除いてほぼ毎回参観、記録した。英語での授業についていくことに困難を感じる日本人学生がいることを踏まえた上で、授業者が駆使する教授法上の有益な指導ストラテジー(translanguagingを含む)のべ50項目を発見し、4つのカテゴリ―(クラス・マネージメント、心理的ケア、認知的スキャフォールディング、言語的スキャフォールディング)に分類した。この結果を紹介する担当者研修(FD)を行った。これらのストラテジーには、2016年度、2017年度で発見した学生の困難さを補う効果がみられ、translanguagingの実際の使用形態についてもとらえることができた。
キャンパスアジアプログラムについては、キャンパス移動の1年目のデータを分析し、口頭発表および、論文にまとめた。この時点では、中国人および韓国人学生は中級レベルの言語力を身に付け、日本人学生も中国先回り組の平均値はそれに近いものになっていた。中国人および韓国人学生は中級レベルの言語力に支えられ、滞在地のことばをおおむねすべての状況で50%以上使用していた。日本人学生は、韓国先回り組のみ、中国人および韓国人学生並に現地語を使っていた。ただ、同じ学生が中国に行った際、および中国先回り組は、1年目ではまだ滞在国のことばをさほど使用せず、母語やその他のことばを多用していたことが分かった。
また、本年度はキャンパスアジアプログラム1期生のキャンパス移動の2年目の年にあたることから、各学期の終了時に、継続して質問紙調査とインタビューを行った。日中韓の3カ国の国ごとに差はあるが、言語能力の伸び、および学生の自分の言語習得観や自らの学びに対する省察には成長の結果として差がみられた。詳細な分析は次年度の作業となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ収集はおおむね順調に進んでいるが、成果発表としての執筆がやや遅れている。最終年度は新たなデータ収集は必要最低限に抑え、分析、執筆に重点を置きたい。
|
今後の研究の推進方策 |
大学のEMI授業の研究については、2018年度抽出した、授業者が駆使する教授法上の有益な指導ストラテジー(translanguagingを含む)のべ50項目について、さらにその中身、分類、効果について詳細な分析を行う。これらの項目は、4つのカテゴリ―(クラス・マネージメント、心理的ケア、認知的スキャフォールディング、言語的スキャフォールディング)にまたがり、複数の機能を果たすものがある。この重層性についてはさらに深く分析をすることでより明確に表現しやすく、したがって、他の教員にも研修(FD)を通して伝えやすくなる可能性を含んでいる。最終的には何等かのハンドブック的なものにまとめたい。
キャンパスアジア・プログラムについては、キャンパス移動の2年間の質問紙調査とインタビューデータの分析を進め、2年間の縦断的な変化をとらえたい。日中韓の3カ国で3言語を同時に学びつつ、使いつつ3カ国の文化や歴史を学ぶプログラムは他には実践例がないが、世界のマルチリンガル環境で行われている大学教育への情報提供という貢献が可能である。こうした状況での学生の2か年の成長、トランスランゲージングの役割について詳細な分析を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が発生したのは、キャンパスアジアのインタビューデータ書き起こし、翻訳作業において、データの長さによって謝金に誤差が生じたためである。来年度に有効に活用したい。
|