研究実績の概要 |
本研究の目的は日本人英語学習者の言語知識を測る具体的指標を構築することである。「読む」「書く」「聞く」「話す」の基盤となる文法の習得に焦点を絞り、日本人大学生が学習してきた文法項目について、「何が習得できていて」「何が習得できていないか」を調査し、習得できていない項目があれば、その困難さの要因を検証する。 昨年度はwh疑問文の困難度順について調査を行ったが、wh疑問文の習得には様々な要因が複雑に関連し、明確な指標構築には至らなかった。しかしながら、その調査過程で主語wh疑問文(=主語の位置からwh語が抜き出された疑問文)は習得が難しいことが判明したため、その要因について考察した。その結果、日本語母語話者が英語を習得する際には、疑問素性(Q素性)の値が[+Q](=wh語を文頭に引き寄せる特性)と[-Q](=wh語を文頭に引き寄せない特性)の2つの値だけではなく、[+Q」の中でも「引き寄せる特性」と「引き寄せたら消える特性」の2種類のパラメータが存在する可能性が示唆された。 次に日本人英語学習者にとって習得が難しいとされてきた前置詞の習得についての実験を行った。10種類の前置詞(at, in, on, for, during, by, until, from, to, of)の持つ16の意味用法について困難度順の調査を行い、困難度指標を構築した。この結果は平成30年度に開催される英語教育系の学会で発表を予定している。さらに、この困難度順になった理由についても考察予定である。
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