研究課題/領域番号 |
16K02873
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研究機関 | 阿南工業高等専門学校 |
研究代表者 |
勝藤 和子 阿南工業高等専門学校, 創造技術工学科, 教授 (50363130)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 学習ストラテジー / 認知ストラテジー / メタ認知ストラテジー / 社会対人ストラテジー / 情意ストラテジー / 教材開発 / 因子分析 |
研究実績の概要 |
28年度の研究結果では,高専生のメタストラテジー使用の低さが明らかになり,メタストラテジーの明示的な指導の必要性が認識された。しかし,研究方法に自由記述を用いたため内容が多岐にわたり,傾向が把握しづらく,体系化された質問紙法を用いたアンケートを実施することが課題となっていた。 29年度は学習ストラテジーの調査アンケートSILL(Oxford, 1999)を用いて,高専生の学習ストラテジーの使用についてアンケートを実施し,因子分析を行った。因子の数は,4個と解釈した。それぞれの因子の因子寄与率と名称は次のとおりである。まず第1因子は,因子寄与率が16.02%で,メタ認知・メタ社会対人・認知ストラテジーという名称にした。第2因子は,因子寄与率が14.75%で,社会対人・認知ストラテジーと名づけた。第3因子は,因子寄与率が11.79%で,情意・認知ストラテジーという名称にし,第4因子は,因子寄与率が9.20%で,情意ストラテジーとは負の因子負荷を示したことから,反情意・認知ストラテジーと名づけた。 すべての因子には,共通して認知ストラテジーが含まれ,高専生は,認知ストラテジーを基本的に用いながら,他のストラテジーの使用に傾向が見られることが分かった。第1因子では,メタ認知ストラテジーとメタ社会対人ストラテジーの項目の頻度が高い。第2因子では,他者との関わり合いの中からの学習を進めていく社会対人ストラテジーを用いる学習者の傾向が見えてくる。また,第3因子では,自身のモチベーションや感情を大切にする情意・認知ストラテジーを多く用いる特性が示されている。最後に第4因子だが,この因子は,情意ストラテジーと負の因子負荷が示された因子であることが特徴である。第4因子に含まれるストラテジーの使用傾向がある高専生は,自分の感情を記録したり,他者に話したりする習慣はなく,適切であると判断したストラテジーを着実に使用していると予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ストラテジー使用の実証的な研究の精査は進んでいるが,29年度に計画していたストラテジー指導については,文献精査に止まっている。特に,当初計画していたリーディングに関する学習ストラテジー指導教材の開発,試行,評価の実施には至っていない。理由は次のとおりである。28年度収集した高専生が速読時に使用する学習ストラテジーを自由記述による遅延内観アンケートの分析結果では,調査対象者の速読時のメタストラテジー使用の低さが明らかになり,メタストラテジーの明示的な指導の必要性が観察された半面,自由記述による遅延内観を使った情報収集であったため,内容があまりにも多岐にわたり,頻度が蓄積されにくく,頻度が皆無のストラテジーも見られた。その結果を受けて,高専生の現状の学習ストラテジーの使用の現状を把握するためには,体系化された質問紙法を用いたアンケートを実施することが必要となり,2年目である29年度にその調査の実施が必要となった。また,29年度は,分析手段として当初計画になかった因子分析を取り入れたため,その手法の実施や解釈に時間を有した。結果的に,教材の開発,試行,評価の実施に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進策は,研究計画調書の【研究が当初計画通り進まない場合】の計画に準じて実施したい。具体的な方策は次のとおりである。まず,文献精査は国内におけるストラテジー指導の実証的な研究(特にIkeda & Takeuchi, 2003; Ozeki, 2000)の精査を確実に行う。また,リーディング教材の開発や選定は時間的に困難であるので行わず,既成のリーディング指導教材を用いることで乗りきる。学習ストラテジーの指導教材は,リーディングストラテジー指導教材のみの開発に絞る。特に29年度に実施した因子分析結果から,高専生のストラテジー使用には,全体的に認知ストラテジーの使用がベースにあって,それぞれがメタ認知ストラテジー,社会・対人ストラテジー,情意ストラテジーとの組み合わせる傾向があることがわかったので,この知見をもとに,リーディング学習ストラテジーの指導教材の開発を行うことに傾注する。また,学習者のリーディングストラテジー使用については,カラーコーディング法や個人インタビューなどを用いて,記録を取りたいと考えている。その後記録を質的・量的側面から分析し,知見をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定していた図書の中で,不必要と思われるものが生じたため。 30年度中に最終的な知見をまとめる上で,必要な図書の購入を再計画して購入する予定である。
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