本研究最終年度、タイ王国のプリンス・オブ・ソンクラ大学で3週間の看護実習を行った学生5人に対し、限定的であったが実習帯同し、指導教員とのコミュニケーションの様子について録画・録音を行った。初年度、2年目ともに渡航が実現しなかった経緯もあり、今回の最終年度が唯一のデータ収集の年度となっている。本来、データ収集の場面として、看護実習が病院内で行われる日時の帯同を先方に依頼をかけていたが、実際には施設見学と地域訪問に限られていたため、データとしては本研究が目指していた内容、量ともに、かなり限定されたものになり、学生用の教材作成には至らなかった。しかし、実習後の学生の報告レポートにより、英語に関して実習先で求められる具体的な在り様が明らかとなった。つまり、学生が学んだ診療科で求められる医療単語の程度、などである。日本語で完結する看護教育と、母国語(タイ語)の教科書がないため英語の教科書で学ぶ看護教育の2者間の実情は、日本の学生の大きく遅れた実情を浮き彫りにしたと言える。 本研究は、個人研究の限界も課題として残った。つまり、学生の看護英語教育は一般英語教員が担うことが多いため、講義内容や方法論が現在の看護教育に求められていることに合致しない場合もある。そのため、英語教員と看護教員が連携して互いの専門分野を融合させながら、実践に即した ESP (English for Specific Purposes) 教育を構築したほうが、現在の看護英語教育の課題に対応ができるのではないか、ということである。そのためには、本研究の類は、実習先の海外の大学との共同研究という形式をとることが望ましいであろう。
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