研究実績の概要 |
本研究は、英語の話し言葉における日本人学習者の談話標識(discourse markers)の使用と習得に関して、母語である日本語の影響に関する調査、及び、学習者の主たるインプット資源となる英語教科書・教師の指導の影響に関する調査を行い、どのような要因がどの程度、影響を与えているのかを解明すること、そして、今後の英語教科書に掲載する談話標識の種類と提示の方法、順序をまとめた基礎資料を作成することを目的としている。 今年度は、前年度までに採取した日本人英語学習者の日本語と英語の発話データ約60名分をインタビュータスク、イラスト描写タスク、テーマに基づくショート・スピーチタスクの3つのタスクごとの談話標識の使用場面と機能を質的に分析したところ、いずれのタスクにおいても、日本語の談話標識の使用が英語の談話標識の一部項目の使用で、影響を与えていることが示唆された。 また、今年度は、中学校用英語教科書3種類・3学年分の計9冊、高等学校英語教科書3種類・3学年分の計9冊のデータベース化を行い、談話標識の頻度分析を行った。その結果、“and,” “because,” “or”といった構造的、指示的機能をもつ談話標識がモノローグで多く使用され、“I think,” “I see,” “OK/okay”などの対人関係的な機能の談話標識がダイアローグで多く使用されていることが確認できた。 加えて、その分析結果を日本人英語学習者コーパスに含まれる談話標識の頻度と比較したところ、モノローグ、ダイアローグのどちらも日本人英語学習者の談話標識の使用が限定的なものであり、教科書でのインプットが学習者の言語には十分には反映されていないことが示唆された。なお、この研究成果は、令和2年8月の国際応用言語学会(開催地:オランダ・フローニンゲン)での研究発表として採択された(大会は令和3年に延期)。
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