研究課題/領域番号 |
16K02891
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中川 純子 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 講師(非常勤) (80645961)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 発音教授法 / 外国語教育 / 教材開発 |
研究実績の概要 |
平成30年度は平成29年と平成30年の実験およびKernmerkmaleについての議論を反映させた教材の開発に取り組んだ。これまでに作成した紙媒体教材、CDの改定に取り組み、関連したWeb教材のコンテンツ開発と合わせ、自律学習のための発音総合教材のプランニングを行った。 平成30年度前半は、練習素材を最終的に確定し、紙媒体の教材を概ね完成させた。これまでの成果を日本独文学春季会研究発表会(2019年5月)にて「ドイツ語発音におけるKernmerkmale- コミュニケーションの観点から見た身につけるべき発音の力」として、連携研究者と共同で発表した。平成30年度後半は主としてWeb教材開発に従事した。本教材は日本のドイツ語学習者を念頭に置いて始めたものだが、方法論的な汎用性を検証するため、ウェブ版はドイツ語に翻訳し、二言語で提供することを目指すこととした。ドイツ語版の作成にあたっては、Goethe-Institut専任講師Monika Haas氏と音声学の専門家である獨協大学講師David Fujisawa氏に翻訳のみならず内容も含めた検討をお願いした。実際のメディアの製作は、外国語教材に経験のある業者に引き続き協力を依頼した。教材の暫定版を元に、大学のドイツ語の授業で随時実践を行ったほか、放送大学面接授業の発音編で使用、また広く一般の学習者を対象とした「ドイツ語発音のワークショップ・超入門編」を湘南日独協会(2018年1月27日)にて開催し、本教材を用いた実験的な授業を行った。 さらに今年度から、発音教材をカリキュラムに取り入れるため、内藤哲雄氏の開発したPAC分析インタビューの手法を用いて、教育についての教師の意識を明らかにする研究に取り組んでいる。本年度はPAC分析の研究会に参加し、そこでの議論を通じて本研究へ利用する方法を探った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究は概ね順調に進行している。当初の予定と異なるのは日本語母語話者のドイツ語の問題にとどまらず、広く世界のドイツ語学習者全体を視野に入れた教材開発を目指している点である。そのため、当初予定していたDVD開発よりも、世界への発信に威力のあるWEB上で公開できる教材に力点を移している。先行研究によると、発音教育には教える教師の動機付けが重要であるとの報告が度々されている。そこで具体的なシラバスやカリキュラムへの組み込みには、発音教育への教師の意識を明らかにすることが重要であると考え、PAC分析インタビューの手法を用いての調査に取り組んでいる。そこで明らかになった教師の問題意識や発音を導入することへの躊躇、課題などを詳しく見ていくことで、教師に寄り添った、現実的な教材づくりを目指しす。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度前半には、教材の最終仕上げを行う。紙媒体の教材とWEB版(日本語とドイツ語の二言語での同時提供)の教材の完成を目指すとともに、実際の授業での利用へ向けた様々な検証と問題解決への取り組みを行う。発音が授業に組み込まれにくい理由については、過去の研究から時間の不足や教師側の専門知識の不足などが挙げられている。こうした問題を乗り越えるため、まずは教師側の意識を明らかにするインタビュー調査を行い、それと並行して、本研究の成果である発音のKernmerkmaleとその説明を動画で提供するための開発を行う。発音の基礎を動画のシリーズ化することにより、教師と学習者双方の学習へのハードルを下げ、授業に組み入れることの負担を大幅に軽減することを目的とする。こうした動画の有効性・学習者の反応を調べるため、デモ版を授業で実験的に用いる(携帯できるタブレットPCによる提示)他、ドイツ語学習者、および教員を対象としたワークショップを行う。ワークショップでの成果および議論をふまえ、必要に応じてデモ版に修正を加える。最終的な動画の撮影および録音をHalle大学のDiel氏のもとで行い、アニメーションDVDとしての仕上げを専門の業者に協力を依頼し完成させる。平成31年度後半には教材全体(本、CD、Webサイト、動画サイト)の仕上げと教授用資料の作成、学習者のタイプやコースの目的に応じたシラバスの提案を行う。教材は、ドイツ語学習者のための教材である他に、ドイツ語教師にとっても音声学および発音教育の知識の手助けになることを念頭に製作し、指導のための具体的な手引きを作成する。本研究の成果をまとめ、 Kernmerkmaleを中心とした発音指導法について国際学会で発表するとともに、連携研究者と共同で論文を執筆する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Web教材の開発費が次年度に送られたため。web教材は当初は日本語のみで公開する予定だったが、内容的汎用性に鑑みて、二言語で提供することとしたため、具体的な開発作業に至る前の翻訳作業や内容の確定の時間が必要となった。その作業もほぼ終了したため、最終の完成には支障がないと考える。
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備考 |
(2)は(1)をベースにしたドイツ語版であり、特定の母語の学習者を対象とせず広くドイツ語学習者に向けて発信されるものである。
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