研究課題/領域番号 |
16K02900
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
柴田 里実 常葉大学, 外国語学部, 准教授 (80460541)
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研究分担者 |
良知 恵美子 常葉大学, 外国語学部, 教授 (10230856)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 多読 / RWL / リスニング / Readability / Listenability |
研究実績の概要 |
本研究課題の目標は、多読教材の難易度を多角的な視点から検討し、汎用性のある多聴レベル指標を開発すること、およびその有効性を検証することである。 平成30年度(2018年度)は、第一に、日本人大学生の英語リスニング教材の活用に関する実態調査を行った。その結果、インターネット上の教材やアプリなどを使用したリスニング教材に関しては活用頻度が高いが、CDなどは活用頻度が低く、学習者によっては視聴方法がなく、活用できないという問題が明らかとなった。そこで、2019年度の予備調査として、インターネット上の多読教材の活用の可能性を模索するため、実際に使用することで、複数のインターネット上の教材の使用感、問題点を探索的に研究した。2019年度は、そのうちの一つのインターネット上の教材が多読活動を促進するのかを調査する予定である。 第二に、聞きながら読むという活動であるReading-while-listening (RWL)の効果について調査を行った。多くの研究者は、RWLは、聞くだけの活動であるListening Only(LO)に比べて、特に物語を扱った場合に理解度と定着度に肯定的な結果が見られると報告している。母語での読み聞かせに関する研究では、文字を読むことができるようになってからも、読み聞かせをすることで、後の読書習慣の形成に大きな影響を及ぼすことが報告されていることがわかった。多読を、学習者向けの短い教材(2万語以下)を読むだけでなく、5万語前後の一般書が読めるように支援していくことを目指すとすると、Middle Grade(MG)からYoung Adult(YA)といった作品を読めるよう支援する必要がある。本研究の対象となった学習者は、RWLを活用する学習者は、MGやYAを読むことができるようになり、RWLが読みを補助・支援する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅れの原因として、まず、大学の移転に伴い、多読研究の中心となる書籍の保管場所が大きく変化し、新しい場所でのシステム化に予想以上に時間がかかったことがあげられる。また、移転に伴う学習環境の変化により、学習者の多読活動の支援方法が2017年度までの状況から激変したため、研究計画の修正をする必要があったことがあげあれる。さらに、CDという音声教材の活用率の変化が予想以上に進み、大学の物販ルートではCDの入手は困難と連絡のあった教材も多くあり、オーディオブックの入手がこれまで以上に困難となったことも大きく影響した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の予定は、第一に、すでに応募済みのExtensive Reading World Congress(Taiwan)での二つの発表、および全国語学教育学会(JALT)での発表の準備を進める。 第二に、文献研究およびインタビュー調査から、Listenability(聞きやすさ)を測定する上では、Readability(読みやすさ)と比較し、どのような要因が関係するのか、Radability(読みやすさ)に関する指標(Lexile、Reading Level、ATOS、Yomiyasusa Level)とListenability(聞きやすさ)はどのように関係しているのかを精査する。 第三に、RWL活動と読了数・読了可能レベルの関連性を調査する。研究方法は、英語専攻の大学生115人にインターネット上の教材を使った多読を導入し、1)学習者はRWL活動を行うのか、2)RWL活動は読了数に肯定的な影響を与えるのか、3)何がRWL活動を阻害するのかについて調査する。さらに、英語多読を学習者向けの2万語以下のリーダーを読んで終わるのではなく、Middle Grade Literature、Young Adult Literature、一般書が読めるように支援するための方法を探索的に調査する。研究方法は、多読活動を1年以上継続した経験のある学習者17名を対象に、CDを活用したRWLを導入し、読了語数、多読活動の習慣化について調査する。また観察およびインタビューによって、1)学習者はどのレベルでCDの活用を好むのか、2)学習者にとっての「聞きやすさ」は何かを調査し、リスニングレベル指標を完成させる。最後に、インターネット上の教材とCDは、どのように学習者の多読量とレベルに影響を与えるのか、どのような教材であれば、学習者は活用できるのか、指標の活用について調査を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
大きく分けて4つの要因があげられる。第一に、国際学会の開催場所が、当初の予定から変化したため、当初の計画の旅費・宿泊費がかからなかったことが、あげられる。2018年度に参加した全国英語教育学会は、開催地が地元の静岡であったため、予定していた旅費および宿泊費がかからなかった。また国際学会も、日本での開催となったため、同様に旅費がかからなかった。第二に、学会発表およびデータ処理用のコンピューターの選定に手間取ってしまい、年度末の発注に間に合わず、翌年度繰り越しとなってしまったことは深く反省している。第三に、図書の発注が上手くいかず、語数登録やデータ処理の研究補助人件費が計上できなかった。迅速に進めていけるようにしたい。最後に、音声の入手形態の劇的な変化が、予定していたCD形式での図書購入が不可能となったことも大きく影響した。
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