研究課題/領域番号 |
16K02900
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
柴田 里実 常葉大学, 外国語学部, 准教授 (80460541)
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研究分担者 |
良知 恵美子 常葉大学, 外国語学部, 教授 (10230856)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 英語多読 / リスニング / 学習習慣 / Input量 / 多聴 |
研究実績の概要 |
本年度は成果の発表として、2種類の成果物を作成した。第一に、総合型英語力を養成するため、外部試験を活用した指標、英語多聴レベル、英語多読用書籍のレベルとの関係を学習者向けに解説した解説書を作成した。外部試験は、実用英語検定とTOEICを取り上げ、さらに国際的指標としてCEFR(外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ言語共通参照枠:Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment)を、多聴・多読との関係性を解説した。研究参加者の多読量および外部試験結果から、多読初級として8ステージ、多読中級として6ステージ、多読上級として4ステージの全18ステージに分割し、分析した。学習者は、自身のレベルと大きく乖離した英文を読むことが英文を読むことであると認識している傾向があり、読みの流暢さに関して、注意が向いていないため、WPM(1分間に読める語数)という読みのスピードと多聴教材(本研究では朗読音声)のスピードを比較し、流暢に読むことの重要性について論じた。 第二に、英語母語話者の子供たちがどのように読解力を伸ばしているかという視点を取り入れ、中級から上級レベルの学習者向けに解説書を作成した。母語話者向けの書籍は、英語学習者向けに出版された書籍に比べ、学習者自身が選書をすることが困難である傾向がある。その結果、書籍の選択基準は、「題名を聞いたことがあるかどうか」、「書籍の厚さ」が主要選書要因となり、選書ミスを繰り返してしまうことが明らかとなった。適切な選書が出来なければ、学習者を朗読音声の活用まで促すことは困難であることから、選書が容易でない母語話者向けの書籍を対象年齢、総語数等から、13レベルに分割し、中級から上級レベルの学習者に向けた解説書を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究を実施するにあたり、主に三つの要因が、研究計画の実施を困難にさせた。第一に、「統合型英語力養成を目指した多聴レベル指標の開発」のため、リスニング教材を学習者に活用させることで、指標を開発する予定であったが、研究当初は広く利用されていたCDの利用率が大幅に減少したことで、オンラインでの音声の使用が望ましい状況へと変化した。特に本研究で対象としている朗読音声は、CD以外の媒体であれば、研究参加者一人一人が音声の購入をするしかなく、大学の教材管理ルール上、そのような変更は不可能であった。また、オンラインでの音声購入も認められておらず、CDでの朗読音声の出版が激減したことも、予想をはるかに超えた、音声技術および音声活用の生活様式の変化であった。さらに、研究参加者の中にはCDプレーヤーを使用する習慣がない学習者が増加し、データ収集が予定通りには進まなくなった。音声技術の発展が予想を超えたことは、本研究の進捗を妨げた。 第二に、コロナ禍により、書籍の貸し出し、研究参加者との接触、研究協力者との会議の実施等、想定外の問題が数多く生じ、柔軟かつ迅速な対応が出来なかった。感染防止対策を考慮した結果、書籍および音声教材の貸し出しや教材の共有問題に対する最善策が見つからず、研究計画の見直しをうまく進めることが出来なかった。したがって、成果物の作成を早める形で研究を進めた。第三に、学会の相次ぐ中止や国際学会の開催中止等により、成果発表の予定を変更または延期をせざるを得なくなった。また、アメリカの研究者の招聘などは、コロナ禍の収束に対し、十分な時間軸の予測が出来ず、オンラインへの切り替えに迅速に対応することを躊躇してしまい、研究の遅れにつながった。以上の問題点から、予定していたデータ収集や成果発表の準備を中断し、途中経過としての成果物作成にシフトし、研究を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍での影響を考慮していただき、最終年度を延長することが出来たため、今年度は迅速に進めていく予定である。第一に、統合型英語力養成を目指した多聴レベル指標を提案するため、昨年度の学習者向け書籍を対象とした多読初級として8ステージ、多読中級として6ステージ、多読上級として4ステージの全18ステージに、さらにリスニング指標を加え、成果物を改訂し、完成させる。第二に、朗読音声の活用に関して、コロナ禍の影響で実施を延期してきたインタビューを実施する。その際、オンラインでの実施を、代替案として計画し、必ず実施できるように試みる。第三に、母語話者向けの書籍の朗読音声に特化し、学習者が朗読音声を活用する際の妨げとなる要因を、技術要因、選書条件から検討し、昨年作成した中級から上級レベルの学習者にむけた13レベルに分割した解説書を、朗読音声に特化した版として完成させる。今年度は最終年度であるため、本研究の成果を学習者及び教育者に還元できるよう、成果物を完成させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、アメリカの研究者の招聘ができなかったこと、国際学会の開催方法や開催地、国内学会の中止など旅費の使用に大きく変動があったことがあげられる。
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