研究実績の概要 |
本研究の目的は、英語学習を目的とした多聴教材の難易度を多角的な視点から検討し、英語学習者が自律的に英語多聴教材を選択することが出来、さらには英語多読の促進につながるような支援ツールを提案することであった。本研究で対象としている多聴教材とは、学習者向け多読用書籍、いわゆるGraded readers 付属の音声や、オーディオブックと呼ばれる朗読音声を指す。 本研究の結果、第一に、学習者の多聴教材の使用実績を複数年に渡り調査したところ、学習者は、多聴教材の形式により、使用頻度が減少傾向にあることが明らかとなった。本研究開始時では、CDが広く活用されていたが、本研究実施期間の5年間で、CDの使用率は激減し、CDを聴くディバイスが無い等の問題が生じた。聞くことの学習環境が5年余りで、これほどまでに劇的に変化したことは、本研究計画時には予想できていなかった。スマートフォン等のダウンロードタイプの音声は、個々に購入する必要があること、書籍によって媒体が異なることなど、多聴教材を活用するにあたって、学習者にとって、物理的な難易度が高くなってきたことが明らかとなった。 第二に、多聴教材の難易度に関しては、多読教材以上に多くの要因が影響することが明らかとなった。朗読者の性別、朗読者の人数、朗読の良し悪し、効果音の有無、BGMの有無、スピード、国ごとの英語の特徴などに加え、読むことに使用されている指標であるYL.Lexile, ATOS, RL、さらには対象年齢、母語話者向けか学習者向けか、学習者の好みなどの要因が抽出された。 本研究を通して、学習者が使用できる汎用性のある指標の開発は困難であることがわかったが、学習者が自律的に多聴教材を選択するにあたり、どのような視点で選択することができるのか、どのように多聴教材を入手できるかなどを示した学習者向けの解説書を作成することができた。
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