本研究は、英語の基礎的読み書きスキルの一つである英語の音韻認識(音韻意識)に着目し、小学校での「音に慣れ親しむ」活動における音韻意識プログラムの作成を目的とし、英語の音韻意識の指導とその効果の検証を行った。 H29年度はこれまで2年間の音韻認識プログラム経験のある公立A小学校の4年性を対象とし、(1) 音素認識(phoneme awareness)の実態把握、(2)音素の指導教材開発の2点について主に実施した。 前年度までに実施した音節、オンセット-ライムの指導では、指導前よりも指導後のほうが有意に成績が向上していることから、音韻意識指導は児童の音韻への意識を高める効果があることが示された。今年度はさらに獲得が難しいと考えられる音素(phoneme)の指導を行った。指導では音素の混成や分解操作練習を単調にならないよう、児童の好奇心や関心を高められるようなゲーム要素を取り込むと共に、ある程度明示的に「どこを聞くか」の指示の出し方などを工夫しながら実施した。指導回数は、もともとの計画では6回以上を予定していたが、実施校の都合もあり4回となった。指導は研究協力者が行った。課題は音素分解課題(単語がいくつの音素でできているかを数で応える)を用いた。 調査の結果、指導前と指導後では全体的に有意に向上していることが明らかになった。しかし子音によってタスクの難易度が異なり、聞きづらい子音の正答率が低いことがわかった。組み合わせで生じる効果については今後も検証が必要である。また、年齢による自然な音韻認識の発達は9歳前後で停滞することから、小中連携では小学校の中学年~高学年で音韻認識指導から、中学校での活字学習につなげるための長期的観点からのプログラム開発が重要であることが考えられた。
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