研究実績の概要 |
2016年度は,タスクに関わる研究を先行して行い,教科書に用いられるタスクの分類とそのタスク性についての研究を発表をした。次に,場によって変化しずらい心理特性としてのWTCについて,これまでの研究を整理した。また,状況に応じて 変化するWTCについて, Cao & Philip (2006)などの知見を活用し,タスクに特有なWTCのためのアンケートを作成した。彼らの研究に基づき,1.話す相手に関するもの,2.タスクの難しさ,嗜好性や効果に関するもの,3.タスクをする時の意識に関するものなどに区分して,質問項目を 設定した。そのアンケートを少人数の被験者に試験的に行い,その結果に基づき,言葉遣いなどを修正した。 2017年度は,50名の学生に英語の習熟度試験を課し,その結果に基づき,30名の被験者を選定し,ほぼ同じ習熟度の者同士がペアを組み実験を行った。実験は,昨年度作成したWTCの事前アンケートを課し,タスクを行い,事後に,タスクを行っている際のWTCアンケート調査を行った。タスクは,ジグソータスクと意思決定タスクを行い,ペア活動の発話をそれぞれ録音した。実験終了後,アンケートを集計し,その後,録音の書き起こしを行った。アンケートの因子分析の結果,タスクを行った際のWTCは,言語パフォーマンスへの志向を包括したものへと変容したことが判明した。また, WTCの意欲を支える点でも,WTCとその言語パフォーマンスへの志向という点でも,意思決定型タスクよりもジグソー型が高い値を示した。 2018年度は,書き起こした発話データを,流暢さ,正確さ,複雑の観点から分析した。タスクの種類によって,流暢さ,正確さ,複雑さが異なるのかを調べた結果,流暢さと正確さにおいては違いは見られなかったが,統語的な複雑さにおいては,意思決定タスクの方が効果量も大きく,有意に大きいことが判明した。
|