研究実績の概要 |
本研究の目的は、副詞辞がない言語(日本語・韓国語)を母語とする日本人・韓国人にとって、その習得が難しいとされる英語副詞辞の第二言語習得研究を行い、徹底的に「習得難易度」「発達順序」「中間言語」「母語役割」「習得可能性」「学習可能性」などを明らかにすることである。 平成29年度は、英語副詞辞の統語的・意味的特性(Lemmatic Properties)を理論的な面と第一言語習得のデータをもとに検証した。実験的な面で英語の第一言語習得のデータベース(CHILDES)を利用し、統語的特性とされる(1) 疑似自動詞的句動詞(例:Henry took off, David came up with an idea), (2) 副詞辞移動(Particle Movement)=他動詞的句動詞(例:The fireman put out the fire, The fireman put the fire out.), (3) 他動詞的句動詞(例:Laura takes after her father, *Laura takes her father after.)の発達段階を研究した。特に、副詞辞移動(Particle Movement)の習得段階の場合、副詞辞移動は2歳頃の発話で現われていることを究明した。言い換えれば、移動にはコストがかかるとされるが、実際第一言語習得では初期段階で移動の現象がみられることから既存の言語習得モデルの再考を主張した。第二言語習得においては、ファイロット実験で、副詞辞の統語的特性である、「副詞辞移動」は習得可能であると暫定的結論付けに至った。しかし、副詞辞の意味的特性である要素(Dimension, Physicality, Aspectuality, Abstractness, and so on)の習得には差が見られることがわかった。
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