研究実績の概要 |
シャドーイング(プロソディシャドーイング)が、音声知覚の自動化や構音速度の向上に寄与することが先行研究により指摘されている。科研全体のテーマとしては、シャドーイングの最中に、英語学習者の意識をシャドーイングの内容面(意味・統語・語用論)に向ける(コンテンツシャドーイング)と、(1)意味・統語・語用論側面の処理効率の向上や、(2)プロソディシャドーイング先行研究で確認されたような音声知覚の向上がみられるのか検討することにある。 本年度は、その前段階として、シャドーイング遂行中に、意味・統語・語用論的側面に学習者の意識を向けると、英語音の知覚にどのような影響がみられるのか調査した。 実験参加者は、日本人英語学習者35名(男性10名,女性25名,年齢:19-25歳, 平均20.86歳)で、習熟度テストOxford Online Placement Testを受験した(平均59.23点) コンテンツシャドーイングは、4種類(1通常版 2日本語訳判断課題版 3文法判断課題版 4語用論判断課題版)、各16文の英文が音声提示された。実験文に使用された単語は、親密度5.0以上で、4種類のタスク間で親密度・音節数の平均に差の無いように設定された (親密度 F(3,63) = 2.318, ns., 音節 F (3,63) = .31, ns.) 主な結果は、4種類のシャドーイング間で、再生率に有意な差は見られなかった(F (3,139) = 2.443, ns.)。一方、シャドーイング中に行われた課題の中で、文法判断課題の正解率が有意に低かった(F (2, 104) = 106.602 (p < .01). SH2, SH4 >SH3 (p < .01) ). 学習者にとって処理負荷の高い統語的側面に注意を向けてシャドーイングを実施しても、音声知覚に影響を与えないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に行った実験の結果を、第35回SLRF(Second Language Research Forum)にて口頭発表を行った。Nakanishi, H(2016) Determinant processing factors of English sound perception by Japanese English-language learners during contents shadowing また、その内容を論文としてまとめた。Nakanishi, H(2016) The Effect of Contents Shadowing on English Sound Perception for Japanese English Learners, The JASEC Bulletin, 25, 33-44.
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