研究課題/領域番号 |
16K02935
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
栗原 文子 中央大学, 商学部, 教授 (60318920)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 異文化間能力 / 異文化間学習ガイドライン / グローバル市民性 / FREPA / CLIL |
研究実績の概要 |
本研究は,アメリカおよびヨーロッパの言語教育における異文化間能力(Intercultural Competence: IC)育成のためのモデルや指導法を比較検証し,日本の教室における有効な適応可能性について考察することを目的としている。最終年度には, 日本の中高等学校の英語教育におけるIC育成のためのガイドライン(IC能力記述文を含む)を策定する予定である。 28年度は,西フロリダ大学のHabib氏と共同研究を行った。筆者が主として,EUについて,欧州評議会や欧州現代言語センターが刊行した FREPA(2012), EPSTL(2007),また日本について学習指導要領におけるICの育成に関連する記述を分析した。Habib氏はアメリカのThe Standards for Foreign Language Learning in the 21st Century (1999)を中心に文献研究を行った。この研究成果は日米教員養成協議会(JUSTEC)において発表した。 さらに,異文化間理解教育についてのシンポジウムをJACET教育問題研究会と共催で行い,ルートゲ(ミュンヘン大学)氏から異文化間学習とグローバル市民性学習の発展についての発表を伺った。筆者も「日本の英語教員の認識―授業計画・評価における学習者の参加をどのように考えているか」という題で発表を行った。 また, イタリアを訪問し,小・中学校において,優れたIC育成の取り組みをしている英語の授業参観を行った。これらはCLIL(内容言語統合型学習)の授業であったが,生徒に自文化や異文化を意識させることにより異なる文化的視点を持たせ,それらの経験を高次の認知活動を通して統合させようとする学習を随所に確認できた。また,教師から聞き取りを行い,彼らが生徒の異文化間能力の育成につながる学習を意識的に行っていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定通り,28年度の先行文献の収集と分析はある程度進んだ。特に,EUにおけるESPOTL, FREPAやアメリカのThe Standardsと比べて,日本の学習指導要領における文化の記述が最も少なく,また内容的にも異文化間性(interculturality)や異文化間能力の育成について具体的な言及がされていないことが明らかになり,課題が確認できた。また,イタリアでの訪問調査において,CLILの授業ではあったが,異文化間学習の授業実践を録画することができた。 しかし,これらをFREPAなどの異文化間能力の指標となる能力記述文と照らして分析しすることはまだできていない。また,訪問調査を行う国も,当初はアメリカ,フランス,イギリスとしていたが,アメリカは研究者を招へいして聞き取り調査を行うにとどまっており,EU圏としては,フランスではなくイタリアの小・中等学校の訪問へと変更になった。 また,最終年度のガイドライン策定に向けてのモデルとなるような文書や表記方法についての試案をまとめるには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は,生徒の異文化間能力の育成のための優れた取り組みをしている高等学校において聞き取り調査や授業参観を行う。例えば,埼玉県立和光国際高校における異文化理解の授業や都立富士高校における日本の伝統文化(茶道)を発信する取り組みについて,教師や参加する生徒から聞き取り調査を実施する。加えて,FREPAなどの文献調査や,授業見学などを通して得られた知見に基づき,ガイドラインに盛り込むための記述文の選定を行う予定である。また,28年度に引き続き,異文化間学習とグローバル市民性教育との関係性についても研究を深め,日本,ヨーロッパ,アメリカの学校における取り組みを多く収集し,ガイドラインの策定のための試案をまとめたい。
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