研究課題/領域番号 |
16K02936
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
惟村 宣明 東海大学, 国際教育センター, 教授 (90195884)
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研究分担者 |
深井 陽介 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (60623410)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 授業実践活動 / 学習者観察 / 自律的学習 / 外国語使用における緊張 / 緊張克服訓練 |
研究実績の概要 |
本研究のたたき台として公刊した教科書『ラケット』(惟村宣明著、駿河台出版、2017年2月)を、東海大学と東北大学で使用した。学習者を観察し、インタビューとアンケートを行った。教授法研究会を年6回開催し、学習者も交えた研修会を1回開催して実験授業を行った。また、高大連携授業を2回行った。グループ学習による人間関係の緊密化、発声と運動、反復練習と時間を限定した情報処理力鍛錬、体系的理解訓練などで学習効果が高まり、自分自身を表現し発信することに重点を置く教授法により、受動的傾向の学習者が自律的・能動的に変わる様子を確認した。主な観察対象学生は、東海大学のフランス語初級レベル学生約30名と中級、上級レベル学生約40名である。学習者は様々な自主的学習活動を企画した。フランス語による映画を作成し、ユーチューブで発表する企画には多くの学生が参加した。また、この企画に参加した者は、語学学習においても大きな成果を上げた。全国規模の弁論大会に参加した学生は、優勝や準優勝の成果を上げた。 これら一連の活動を観察した結果、初級から中級、上級に進む境目の段階で学習者がフランス語を話す際、強い緊張を覚える時期があることを確認した。これは、各ステージで表現力、応答力が進むにつれ、対応すべき話題のレベルが変わり、新しい環境に対するストレスが生じたことによるものである。我々はこのストレスを克服するための方法を工夫した。一定量の語彙を体得させ、決められた時間にそれらを使って応答する訓練や、演劇的に表現する訓練、実力よりやや難易度のあるテキストをなぞって自己表現に変える訓練などを行った。この際、語彙の適正量を知るため、いくつかの教科書の語彙数を比較した。また、フランスのディジョンとエクス・アン・プロヴァンスに海外出張を行い、初級、中級、上級の各段階における必要語彙数と言語使用環境創出の工夫などについて研究した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
創造-発信の教育プロセスによって、研究責任者と分担者の本務校における学習者の活動がさらに活発になり、これに相当の時間をとられたため、当初予定していた全国規模のアンケート調査ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
我々はこれまで、学習者の観察とインタビュー、実験授業の実践などで、創造-発信型学習システムのための環境づくりや、教授法・学習法に関する多くの知見を得て成果もあげて来た。小規模なアンケートによって、それらの有効性と改善点に関するデーターも得たので、これらをもとにして創造-発信型フランス語学習システムを完成させる。また、日本人学習者の外国語習得における問題点をアンケート調査によって明確にし、それに対応した教材作りを行う。 我々はこれまで、初級、中級、上級の各段階の境目における学習者の緊張を観察した。これに対し、学習者の実力をやや超える語彙による一定量の訓練と、発信への意思を高める環境づくりで、この緊張を自信に変えることか可能となる。その適量をさらなる実験授業で見極め、特に初修学習者のための教材作りに反映したい。初修学習者では、1.自分について語り、他者を知る。2.フランス語圏で日常生活を送る。3.自分の意見を述べ、意思を語る。という3つの発展段階を想定している。この3つの発展段階で、学習者には、発信すべき課題を与え、そのために必要な訓練をアクティビティによって体得させる。このアクティビティの方法と構成こそ、本研究の中核をなすものである。創造-発信システムを完成させるために、研究分担者と年6回ほどの研究会を行う。システムの完成と有効性の裏付けのために、学習者が各段階への移り行においてみせる緊張度とその原因についてより詳しく研究する。言語使用環境の創出のため、引き続き海外の研究機関と連絡を取り、研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)学外でのアンケート調査が十分できなかったため。
(使用計画)学外でのアンケート調査を実施する
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