第二言語習得研究ではこれまで、海外留学によって第二言語を使用する機会が増えることで、様々な言語的側面が発達することがわかっている。海外留学は多くの大学生にとって自身の「学習歴における重要な意味を持つ経験」であり、第二言語コミュニケーション能力だけでなく、価値観や自己効力感、アイデンティティなど、心理面においても大きな変化をもたらすと考えられる。 学習者の心理的変化を理解するため様々な研究方法が試みられているが、そのひとつとして「ナラティブアプローチ」が大きな注目を集めている。本研究ではナラティブアプローチを用いて海外留学期間中に日本人英語学習者の動機づけがどのように変化するのか、またどのような内的および外的環境要因が学習者の動機づけに影響を及ぼすのか調査を行った。 1年目は研究参加に同意した日本人大学生30名(長期留学者10名、中期留学者20名)に対して、それぞれ約1時間の留学前インタビューを実施した。2年目は留学中の研究参加者が毎月作成する留学記録の収集と分析を行った。また留学を終え日本に帰国した参加者(中期留学者20名)に対して留学後インタビューを各1時間程度実施した。インタビューでは留学中の経験、動機づけの変化などについて尋ねた。さらに、帰国した学生にビッグファイブ理論に基づくパーソナリティ診断テストを実施した。すでに採取した留学記録およびインタビューは逐次書き起こしを行い、分析を行った。
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