研究課題/領域番号 |
16K02940
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研究機関 | 愛知工科大学 |
研究代表者 |
江口 朗子 愛知工科大学, 工学部, 教授(移行) (30758602)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 初期EFL学習者 / 統語発達 / 英語コミュニケーション / 処理可能性理論 / 英語発話コーパス / 早期英語学習開始 / 語彙発達 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,日本の小中学生の英語コミュニケーション活動における発話データを文法習得の観点から分析し,初期英語学習者の文産出能力の発達プロセスを解明することである。小中学生の英語学習者から収集した言語データを電子コーパス化し,第二言語の発達段階の普遍性を予測する処理可能性理論(Pienemann, 1998)に基づいて横断的に分析し,さらに,学習開始年齢が文法発達に与える影響や外国語学習における言語発達の評価方法の検討を行う。 平成29年度は,海外の小学生を対象にした外国語学習の効果や言語発達の評価方法に関する文献研究と,平成28年度までに電子コーパス化した日本の小中学生の英語発話データに基づいて,次の実証研究を行った。(1)先行研究において一致した見解が得られていない複数形の発達過程について,構造の出現と正用率の両方の観点から横断的に分析し,その結果を国際学会にて口頭発表した。(2)日本の環境における英語学習の早期開始が英語スピーキング能力に長期的に与える影響を調査した。学習開始が小学3年生以前と4年生以降の2つのグループの人数が均等になるようにコーパスデータを準備し,統語発達と語彙発達について,ワーキングメモリなど認知的な能力の個人差も変数に含めて,学習開始年齢とデータ収集時の年齢による影響を一般化線形混合モデルで分析した。その結果,早期学習開始は,統語発達には長期的に影響を与えるが,語彙発達には長期的な影響を与えないことが示唆された。(3)日本の小中学生の英語スピーキングにおける言語発達の評価方法を検討するために,構造の出現を習得とみなす処理可能性理論が予測する統語の発達段階と言語的複雑さとの関連性を調査した結果,前者の発達段階は,統語的複雑さと語彙的複雑さとにそれぞれ強い相関が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の実施計画に従って,日本の小中学生英語学習者の複数形の発達過程に関する研究成果を国際学会(JSLS 2017)で発表した。また,早期学習開始がスピーキング能力に長期的に与える影響を分析した。研究成果の出版はまだできていないが,平成30年度に実施予定である小中学生の言語発達の評価方法を検討するための準備として,処理可能性理論に基づいた発達段階と言語的複雑さとの関連性についての分析を平成29年度中に完了していることから,3年計画全体では順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,次の実施計画に従って進める。(1)日本の小中学生の英語学習の早期開始がスピーキング能力に長期的に与える影響を調査した研究成果を,国際学会(EuroSLA 2018)にて発表する。(2)日本の小中学生の言語発達の評価方法に関して,文構造の処理可能性,言語的複雑さ,CEFR-Jの観点から検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は,平成29年度に開催される国際学会で2件発表する予定であったが,海外で開催される国際学会で発表する予定であった1件を、次年度の国際学会で発表することにしたため、その分の予算を次年度に回すことになった。
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