研究課題/領域番号 |
16K02941
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
渡辺 紀子 立命館大学, 国際関係学部, 非常勤講師 (40466909)
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研究分担者 |
野口 ジュディー津多江 神戸学院大学, グローバル・コミュニケーション学部, 名誉教授 (30351787)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アート / グローバル化 / 言語化 / ジャンル / 日本 / 脱工業化 / 支援・助成制度 / 戦術 |
研究実績の概要 |
研究体制を見直し、先行研究のレビューを野口、インタビュー調査と分析を渡辺、言語分析を三崎が担当することにした。学会発表もインタビュー調査を元にまとめたもの、言語分析を中心にまとめたものに分けて発表し、焦点が定まり、より深い分析につながった。先行研究のレビューにより、アーティストらに必要な英語に関する研究は限られるものの、美術や工芸の分野で実践的な研究と美術とデザイン分野に特化した英語教材も1点ずつ見つかった。さらに海外の文学、哲学、人類学などの分野の研究者によるアートマニフェストというジャンルについて研究されていることもわかった。
海外での学会発表にあわせて、現地を拠点に活動する日本人アーティストたち(音楽家、美術家、ダンサー・振付家)にインタビューを実施した。その結果、外国語使用状況のほか、言葉そのものに対する意識の変化、言語化することがそれぞれの活動に与える影響についても興味深いデータが得られた。言語分析に関しては、インタビュー調査でニーズの高さが確認されたサイト版のポートフォリオ、プロフィール文、アートに関する会話に絞って分析を進めることにした。Webサイト版のポートフォリオとプロフィール文において、分野間で共通する言語特徴と異なる言語特徴を、非言語面の特徴とあわせて確認した。
2018年度は、ヨーロッパとアジアで開催された3つの国際学会で発表した。とりわけALAPPではChairを務めた海外の研究者に国際的な学術誌に投稿することを強く勧められた。RELCでは、アーティスト対象の英語教育に関する報告者数名と出会い、今後の共同研究の可能性など探っている。国内でも研究会を自主企画してフィードバックを得てネットワークも形成することができた。さらに、カルチュラル・スタディーズ学会で、アーティストらを招いてアーティストトーク、パネルディスカッション、ワークショップを企画・実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
インタビュー調査から得たデータから問いを立て直し、アーティスト個々人の経験や気づきをより広いコンテキストに位置づけることで、見えないグローバル化のプロセスとして捉え直すことができた。これらを踏まえた発表要旨を2019年度に開催される国際学会に投稿したところ、2名の審査員より高い評価を得て採択された。予定していた「ニーズ調査」を越えた国際的に見てもオリジナルな学際的な研究として発展しつつあると確信している。インタビューするアーティストたちの反応もよく、研究成果をまとめた書籍の刊行も促された。
言語分析に関しては、脱「モデル分析」を図り、日本人のアーティストたちの英語を「問題」として見なすのではなく「戦術」として捉えることにした。理工系で使われるジャンルと異なり、アーティストらが用いるこれらのジャンルは比較的フレキシブルな形式が特徴的で分析は容易ではないが、よりフレキシブルなジャンルの捉え方や非言語面を分析対象にするなど、分析手法も工夫している。さらに、インタビュー調査結果と連動させることにより、一人のアーティストがプロフィール文を書き分け、更新するといったことも踏まえて、テクストをより動的に捉えることも試みている。
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今後の研究の推進方策 |
インタビュー調査と言語分析をさらに進め、より多くのデータを用いてより深く分析をする。アーティストたちが活動でしばしば用いる会話のジャンルの分析もすることにしたため、アーティストらを招いてワークショップと交流会を開き、そこでデータを集めて分析する。その際、会話というジャンルの言語特徴をどのようにして捉えるのか、先行研究も踏まえて検討する。2019年度に調査・分析結果を共著でまとめて、国際的な学術誌に投稿する。その後、それぞれの担当箇所を個別に深化発展させ、単著の論文や書籍としての出版を目指す。
研究成果をもとにハンドブック出版企画をまとめ、出版社に打診する。英語以前にアーティストらが言葉を使うこと、そしてグローバル化、デジタル化、日本の脱工業化が進む中でその必要性が益々高まっていることが余り知られておらず、国内の専門教育にも反映されていない。SNSやウェブサイトの活用や一般向けの書籍の出版も含め、研究発表や論文執筆以外の方法で研究成果を広く共有する方法を検討し、実行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度はエボラ熱の流行でブラジルでの学会発表を3名ともキャンセルした。2018年度はイギリスの2つの学会で発表したが、研究分担者と研究協力者は家族の介護等のためキャンセルした。そのため、予定通りに旅費が使えなかった。来年度に参加しやすい国内やアジアの学会で発表予定である。
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