現在、日本では法定通訳人をはじめとして、司法全般(警察、検察、入国管理局、税関、裁判所、法テラス、刑務所など)で業務を行う司法通訳人といわれる職 務に関する法整備や認証制度が全くと言っていいほど整っていない。これについては諸外国からも批判を浴びており、また実際に法廷での誤訳問題が発生してい る状況を鑑みれば、日本において司法通訳人の認証制度および教育制度が必要なことは明らかであり、この設計を目的として研究を行ってきている。 平成29年度は、過去に引き続きこれまでの研究を国内外で発表してきたと同時にそれに伴う論文執筆および投稿を継続している。加えて、アメリカ(ハワイ州、 カリフォルニア州サンフランシスコエリアおよびロサンジェルスエリア)での司法通訳人の歴史、認証制度、教育制度、採用試験に関する調査を実施した。この ため、現地に滞在、実際の法廷傍聴を継続的に実施、また通訳採用や教育に携わる担当者と面談して、通訳人の現状や在り方について情報収集、調査を実施、さ らには採用現場の見学や通訳人のための教育セミナーにも参加して、参加者の実際の声も収集してきた。平成28年度のワシントン州およびシアトル市での調査と 合わせ、州としてまた連邦政府として司法通訳人制度の整備が進んでいるアメリカでの実情調査と実地研修を俯瞰できるだけの情報収集ができたと考えている。 よって、これまでに集積した情報、文献資料、インタビュー、法廷データなどを詳細に分析して、実際の規定やテスト項目、実地条件など様々な項目について制 度設計のための枠組み構築を行っている。またそれに伴い、学会発表や論文執筆などを継続してきている。 平成29年度までの調査を踏まえ、平成30年度はそれら情報のラップアップを中心に行い、論文執筆へと結びつけた。資料が膨大となったため、まとめながら論文執筆を継続してきている。
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