本研究は、沖縄における韓国人観光客の急増に伴う急ぐべきインフラ整備の一環として、沖縄の地域性を考慮した言語対応の基準整備を提案するものとしてスタートした。言語対応面を主に「文字面」と「対話面」に分け、「文字面」では沖縄県内の翻訳ルールの情報共有と持続的な検討を、「対話面」では地域性を反映した韓国語カリキュラムの構築を提案してきた。研究最終年度においては、県内外調査および観光サービス関連従事者への追加調査等を通して、上記の提案における今後の方向性を探ることに注力した。 まず、県内(中部・北部地域)および県外(大分別府地域)の追加調査では、これまで見られた言語景観における韓国語翻訳の齟齬等の事例に関する再確認はもちろん、地域による観光客数に応じた言語対応の優先順位事例に関する再確認もできた。つまり、前年度に引き続き、多言語対応の整備が如何にそれぞれの地域性と関連し合っているかが再確認できたことは、沖縄における地域性を考慮した言語対応と指針整備へのヒントにもつながったと言える。 一方、観光サービス関連従事者への追加インタビューでは、文字面の課題として、県の翻訳ルール整備がまだ観光現場に十分情報共有されていない現状が再確認できた。同時に、対話面においては、常に韓国人観光客に接する場面が多いホテルやタクシー、レンタカー等のサービス業界において、段階的な語学研修等のプログラム構築と持続的なサポートが必要であることが明らかになった。 今年度は、日韓関係による観光客の減少という現状を受け、例年の言語対応可能なスタッフ不足といった問題は見られなかったが、今後に向けては状況変化を見据え、研究結果をもとに観光現場で生かす韓国語カリキュラム構築とその実践に力を入れていく予定である。
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