研究課題/領域番号 |
16K02953
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
平井 明代 筑波大学, 人文社会系, 教授 (00312786)
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研究分担者 |
藤田 亮子 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00756281)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スピーキング / リテリング / 自動採点 / 評価 / 技能統合タスク |
研究実績の概要 |
今年度は,これまでのリテリングテスト(Story Retelling Speaking Test:SRST)研究の集大成としての活動とそこから新たな切り口で発展させた研究を行った。 まず,Science Impact(英国のジャーナル)からインタビュー依頼を受け,国内の英語学習者や教員だけでなく,海外にも広く,SRST研究の成果をコンパクトにまとめた記事を出した。また,リテリングテストを中心とした技能統合型スピーキング研究の信頼性に焦点を当てた,シンポジウムのパネリストとして発表を行った。 続いて,SRSTのパフォーマンスの自動採点に関する研究に関して,ネイティブ・スピーカー(NS)とノンネイティブ・スピーカー(NNS)がそれぞれ採点したSRSTの得点と、自動採点として使える5つの特徴量からなる機械評価を比較した論文を海外ジャーナルに投稿したが,不採用となった。そのため,再度,個々の学習者のパフォーマンスを書き起こしたデータも分析し,NSとNNSの採点の違い,および,人間と機械の評価の違いを探り,考察を深めた論文を国内ジャーナルに投稿し,掲載が決定した。 最後に,音声認識ソフトの資料を集め,どのような実験ができるかを共同研究者と討議した。その後,予備実験として,フリーの音声認識ソフトをいくつか吟味し,英語学習者の音声を録音したものを,ソフトに聞かせることで,その再生率を探った。この予備実験に関しては,JALT(the Japan Association for Language Teaching)の国際学会でオンラインによる発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最大の理由は,新型コロナの影響で,対面によるペア活動ができないことである。オンラインではペア活動の録音や観察がしづらいことなどがあり,実験の方向性を変える準備に時間を費やした。それに伴って,論文執筆も遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
まず,SRSTの自動採点に関する研究においては、正確さを担保するため、参加者のスピーキング・パフォーマンスをすべて書き起こしたスクリプトによる分析であったが,実用化には向かないため,発話を書き起こさない採点方法として,音声認識によるソフトの利用研究を行っていく。具体的には,よく使われる音声認識ソフトを集め,学習者のスピーチをどの程度正確に書き起こすか,ソフトの種類ごとに比較し,その性能にどのような違いがあるかを調査する。同時に,準備された発話と準備無しの発話など,異なる質のスピーチの再生率も調査する予定である。 次に,SRSTのテスト形式で,批判的思考力を伸ばすためのテストの開発を進めていく。これまでのルーブリックを見直し,SRSTでどのような批判的思考力を測定できるかを検討していく予定である。実験に関しては,オンラインで行いにくいため,リテリング活動に重点を置かず,その後の意見を述べる部分に重点を置くことで,オンライ上での見えない部分の不平等感や再話パフォーマンスに影響しないテストや教材づくりを行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由としては,新型コロナウイルスの影響で学会参加がオンラインになったこと,また,ジャーナル掲載に係る費用の請求が4月以降になったことである。よって,今年度は,2020年度内で支払うことができなかったジャーナル掲載費と,執筆が遅れた英文校閲費用に充てる予定である。
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