コロナの影響で延長した研究も今年度が最終年度となり,ストーリーリテリング・スピーキングテスト(Story Retelling Speaking Test:SRST)研究を新たな切り口で発展させた。 まず,自動採点に向けてのリテリングの音声認識度の調査を完成させた。リテリングの自動採点と人間が採点する場合の相関および自動採点で重要な指標を調査した。その機械と人間による採点の相関は比較的高かかったが,人間どうしの採点と比べると低く,改善の余地があることがわかった。今後,テクノロジーをもう少し駆使すれば,音声面は自動採点にまかせ,内容に関しては人間が行うという分担が良いことを示唆することができた。その論文はLanguage Education & Technologyの学会誌に掲載となった。 しかし,上記の研究は,音声を書き起こしてから自動採点を行った点が,大きな限界点であった。そのため,さらなる実用化を図るため,広く使用されている音声認識ソフトを使って,学習者の英語スピーチを,どの程度正確に認識するかを調査した。ソフトによって差はあるものの,50%から70%のレベルで認識することを明らかにした。また,日本人が苦手とする発音を特定するのに役立つことがわかり,自己フィードバック用の活用を示唆した。この研究を海外ジャーナルに投稿した。 最後に,SRSTのテスト形式で,要約の力を測るバージョンと批判的思考力を測るバージョンを開発した。それぞれのテストに特化したルーブリックを作成し,授業で実施した。その結果,口頭では考えをまとめるのが難しい学生が多く,学生にとってはやりがいのあるテストタスクであることがわかった。要約バージョンに関しては,要約の方法などの指導が必要であることがわかり,テストタスクと共に,その指導法を確立した。今後,SRSTの基本バージョンと共にこれらのバージョンを公表する予定である。
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