本研究は、日本人の英語のスピーキング能力の発達に関連する要因を探るために、英語学習開始年齢や英語学習経験が英語スピーキングのパフォーマンスにどのように影響しているのかを調べる。当該年度は、研究期間を1年延長した上での最終年度であり、他の年度より研究活動は少ないが、以下のことを実施した。まず、対象としている被験者集団についてよりバランスのとれたサンプリングになるように新たに被験者を募集しデータを取得した。被験者が特定の学校、特定の地域に偏っていると、社会階層や教育レベルの偏りが生じてしまい、結果の解釈が難しくなる。この問題についてはまだ対応が完全ではないと考えているので、研究期間の終了後も引き続き被験者を増やしていきたい。次に、これまで実施してきた言語学的な分析に新しいものを追加し、取得済のデータを対象にこの分析を適用した。最後に、子どもの文法学習に関して論じた論文を海外の学術雑誌に投稿したが、現時点では審査結果は判明していない。研究期間全体を通じて実施した研究は以下の通りである。様々な集団に適用できる英語スピーキング課題を選定し、日本人大学生と極めて英語力の高い日本人小中学生より、英語スピーキングデータを取得した。書き起こした英語に対して言語学的な分析を行い、発話量、流暢性、文法的複雑性、語彙的多様性などを調べたところ、発話量や流暢性などの指標で上記小中学生が極めて優れていることが支持された。しかし英語以外の側面、例えば母語である日本語や言語以外の認知能力について調べる必要性が生じたので、今後はそれらも研究対象とする予定である。
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