研究実績の概要 |
本研究では、ビジネスパーソンなどの大人の英語学習者のための、速度が速い自然な英語を搭載したリスニング・システムのデータ・バンクを拡大した。多くの英語学習 者は英語を読むことができるが、聞き取りが難しいと感じている。また、ビジネスや外交、交渉の際に聞き取りの力が不足しているために不利な立場におかれたり、議論についていくことに困難をおぼえたりしている。潜在的な英語力が活かしきれていないため、国際社会で充分に能力を発揮できない。本研究で、ビジネスパーソンや英語学習者が自由に英語を駆使できるためのリスニング・ ツールを拡大した。 学校英語では、ゆっくり、はっきりとした英語を聞き取る練習が中心となっている。このため、数年に亘って英語を学習しても、海外に行き、実際に生きた英語を耳にすると、理解できないことが多い。文法や語彙力が充分にありながら、意思疎通をはかったり、主張を確実に伝えることができず、英語の能力をフルに発揮できない状況が起きている。平成 17-19 年度科学研究費補助金基盤研究(「第二言語習得研究を基盤とする小、中、高、大の 連携をはかる英語教育の先導的基礎研究」)で 7,354 人のビジネス・パーソンにアンケート調査し たところ、68%の回答者が英語力不足で討論についていくのに精一杯で積極的に貢献できない談話が、全てのビジネス談話の三割以上あると答えていた(小池、松井他、2010)。 本研究では、コミュニケーションの障害になっているリンキング、同化、母音連結、弱化、脱落、フラップ化、成節子音、縮約、無開放閉鎖音などに焦点を当て、既存のリスニングシステムのデータ・バンクを拡充し、曖昧な聞き取りの要素を数値化して、どの聞き取りの要素が聞き取りの障害に大きくかかわっているのか科学的に割り出している。
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