研究課題/領域番号 |
16K02978
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
熊澤 雅子 桜美林大学, 言語学系, 准教授 (20386478)
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研究分担者 |
熊澤 孝昭 東洋大学, 経済学部, 准教授 (20366933)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 外国語教育政策 / 教員認知 / 教員心理 / 外国語教育法 |
研究実績の概要 |
本研究は、実用的コミュニケーション力育成を目指し、過去30年以上にわたって学習指導要領改訂の度に新しい変革が余儀なくされる日本の学校英語教育を文脈として、特に中学・高校に勤務する英語教員の実践にどのような変化があるか、またその変化の要因は何であるかを調査することを目的としている。研究3年目となる平成30年度は、前年度3月に送付したアンケート用紙の回答分析に加え、さらなる質的データ収集のため10月から3月にかけて4名の現職の中高英語教員を対象にインタビュー調査を行った。そのうち2名のついては学校訪問も行った。 アンケートは、ランダムに抽出した関東近県の中学高校100校へ送付し回答率が12%であった。質問内容は、学習指導要領の改訂に伴う学校全体のカリキュラムの変化に加え、その変化がどのようなレベル、どのようなプロセスで起きているのか、回答者の教員個人の授業実践と学習指導要領との関係、現状の問題点など多岐にわたった。限られた回答数の中から抽出できた最も重要な知見は、現場の英語教育の変化がある程度進んでいると答えた回答が大半であったにもかかわらず、その変化が学校全体の取り組みを背景としていない点である。授業改革は個人レベルの授業実践に限られたものが多く、変化のプロセスについても、英語科レベルのイニシアチブと個人レベルの取り組みとの回答が半々で、学校レベルのイニチアチブとの回答はなかった。このことから、英語カリキュラム改革が叫ばれる中、その担い手は主に個々の教員に委ねられている可能性が高いことが推察される。 アンケート分析後のインタビュー調査では、アンケートの質問内容を掘り下げ、特に改革のプロセスが学校レベルの取り組みになっていない要因を教員の視点から探ることを目的とした。このため管理職のベテラン教員2名、20代の若手教員2名から聞き取りを行った。詳細な分析は次年度の課題とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来であれば平成30年度が研究課題最終年度であったが、研究初年度より新規開設の学群に異動になり予想外の業務量だったため、当初計画よりやや遅れ気味でスタートした。研究内容を見直し、アンケート調査とインタビュー調査に絞ってデータ収集を実施したが、平成30年度は負担の重い校務分掌を担い業務量がより一層増え、研究課題への時間の捻出が困難を極めた。またインタビュー調査にあたっては、研究参加者が全て現職の中高英語教員の方々であり、ご多忙の中、好意で研究に参加していただいたため、聞き取り調査や学校訪問の日程は相手方の都合に完全に合わせる必要があった。そのために日程調整に時間がかかり、2名については学期の終わる時期までインタビューができなかった。以上により、平成30年度末ぎりぎりまでデータ収集を行っていたため、研究年度の延長を申請した。平成30年度はデータ収集の途中で、その時点までに収集したデータの分析をもとに途中経過となる発表を行ったが、本格的なインタビューデータの実施と研究の最終的な成果発表は平成31年度に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように、アンケート調査とその結果に基づいたインタビュー調査を平成30年度に行い、最低限のデータ収集は終了することができた。平成31年度は、主にインタビューデータの分析をすすめるとともに、データ収集の中で必要が生じた新たな分野の文献研究(外国語教育政策のディスコース分析、日本における教育機関の組織の特性、イノベーションと組織のあり方の関係など)を進めながら、論文や学会での発表を行う段階にきたと考えている。 今後の課題の一つは、データ収集を行う中で、研究の焦点が変化してきている点である。研究開始当初は教員個人の改革への取り組みを教員心理・教員認知の面に重きをおいて調査する予定であったが、アンケート調査やインタビュー調査を進めるうちに、個人としての取り組みよりも、学校組織として改革への取り組みが進まない要因や、外国語教育政策の作成や共有のプロセスなどの問題点が新たな分析のテーマとして生じてきた。研究者にとって新規の文献研究の必要な分野であるため、データ分析を進めながら文献調査を行うことが必要である。もう一つの課題は、データの量と質である。アンケートの回答数、インタビュー調査の対象者数が少ないだけでなく、その構成のバランスも完全とは言えない。本来であればさらなるデータ収集をしたいところである。上述した新たな文献研究との兼ね合いで、時間の捻出が可能であればデータの補充を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として第一に挙げられるのは、前述のように当該研究課題は当初予定よりやや遅れて進行し、平成30年度いっぱいまでデータ収集を行っていた。このため、学会における研究発表をキャンセルせざるをえなかったため、旅費の使用額が予定より少なくなった点である。それに加え、データそのものも予定より少なくなったためデータの謝金やデータ整理の人件費も予定を下回ったことも差額が生じた原因である。
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