研究課題/領域番号 |
16K02982
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
原田 哲男 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60208676)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イマージョン教育 / 音声習得 / accent / comprehensibility / VOT / 日本語 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、既に米国で実施されている日英語双方向イマージョン教育(日本語母語話者を半数、英語母語話者を半数でクラスを構成し、両方向からの言語のインプットを期待し、両グループとも母語をさらに発達させ、第二言語をも習得させることを目的とする教育形態)の効果を測定することにある。今年度は、音声習得に焦点を当て、このプログラムに所属している英語が優勢の日英語バイリンガル話者(ED)と日本語が優勢の日英語バイリンガル話者(JD)の児童の発音を、アクセント(accent)、理解しやさ(comprehensibility)(e.g., Derwing & Munro, 2015)、音響分析(VOT = voice onset time)の観点から評価した。5人のEDと4人のJDに10分程度のインタビューを行い、そこから20秒程度の音声を取り出し、9人の日本語母語話者に「アクセント」と「理解しやすさ」について6段階のスケール(1=アクセントがない、理解しやすい、6=アクセントがある、理解しにくい)で評価させた。音響分析は、語頭に/p, t, k/が含まれる語をセンテンス・フレームに入れて読ませた。EDの発話は、明らかにアクセントがある(M = 3.8)と評価されたが、ほぼ理解しやすい(M = 2.9)発話だと判断された。パイロットの段階で、参加者も限られているので、はっきりとした結論を出すことはできないが、JDと EDの発音はそれほど大きな差はなく、両方向からのインプットが期待できる日英双方向のイマージョン教育は、発音に効果があると言えそうである。また、ED の/p, t, k/のどのVOTも、JDのものよりも明らかに長く、より英語的であることが判明した。今後は正式な研究に向けて、小学校の各学年からデーターを取り、 より精密にデーター分析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の最初は、米国の小学校からデーター収集の許可をもらうまで予想以上に時間がかかったが、それ以降は現地でデーター収集を担当する専門家も雇用でき、非常に順調にデーター収集が進んでいる。今年度は、本格的にデーター分析を行い、より妥当性且つ信頼性のある結果を出す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、音声習得のみならず、インタビュー(アメリカ外国語教育協議会<ACTFL>のOral Proficiency Interview)により、小学校1年生から5年生までのオーラル・コミュニケーション能力を横断的に測定し、また学年が上がるにつれて、どのように変化するか縦断的にも分析する。ここでは、コミュニケーション能力を、言語能力(文法、語彙など)、談話能力(文と文の関係、一貫性など)、社会文化的能力(丁寧語の使用、呼称の使い分けなど)、方略的能力(コミュニケーションの修復能力など)と定義し(e.g., Bachman, & Palmer, 1996)、ACTFLのOPIの指標に従い、児童のコミュニケーション能力を評価する。さらに、ビデオ撮影の許可が下りれば、算数、理科等の教科指導がどのように日本語または英語で行われているか、とくに教師のインプット(input)の特徴(例えば、どのように児童が教科内容を理解できるように工夫されているか)、教師と児童間や児童同士の交流(interaction)での意味交渉(negotiation of meaning)の特徴、また児童のアウトプット(output)の特徴をも探る(Long, 1996; Swain, 2000)。
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次年度使用額が生じた理由 |
コンピューターを購入予定だったが、研究に十分に使えるものが残金では購入できなかったために、次年度に購入することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額はコンピューターの購入に使用し、残りは既に提出した使用計画通りに使用する。
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