研究実績の概要 |
米国に於ける日英語双方向イマージョン(TWI)教育(継承語としての日本語(Japanese as a heritage language=JHL)話者を半数、英語話者である外国語としての日本語(Japanese as a foreign language=JFL)学習者を半数でクラスを構成し、両グループとも母語をさらに発達させ、第二言語をも習得させることを目的とする教育プログラム)に在籍する児童の子音(無声破裂子音の開放から母音開始までの時間=voice onset time (VOT))の習得を音響分析により調査した。VOTは気音(aspiration)に関係し、日本語よりも英語のほうが長いという音声的差異はある。しかし、両言語ともVOTは音韻的に機能しないが、「らしさ」に影響することがある。本研究は、JHLとJFLグループを比較し、次の三点を研究課題とした。1)JFLの児童は学年が上がるにつれて、日本語の無声子音のVOTの生成はより目標言語に近づくか、2)JFL児童は、同じ教室で学ぶJHL児童のVOTに近付くか、3)JFL児童は、英語と日本語のVOTを明確に区別できるか。日本語50%、英語50%で教科(算数、社会、理科など)を通して両言語を学ぶJFLとJHLのそれぞれの児童で、小学校1年生から6年生までの合計85名が参加した。日本語と英語の[p, t, k]で始まる2音節の語彙を絵で与えて、短い文に挿入して読んでもらった。合計のトークン数は、両言語とも2,500前後で、[p, t, k]のVOTは、それぞれ九つのトークンの平均から算出した。結果は、1)既に1年生でほぼ日本語らしいVOTが習得されていて、その後はほとんど変化が見られなかった。2)日本語学習者であるJFL児童は、JHLのVOTの値と有意差がなく、3)日本語と英語のVOTを明確に区別していたことが判明した。
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