研究課題/領域番号 |
16K02989
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
池田 真生子 関西大学, 外国語学部, 教授 (00425323)
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研究分担者 |
今井 裕之 関西大学, 外国語学部, 教授 (80247759)
竹内 理 関西大学, 外国語学部, 教授 (40206941)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 学校内研修 / 活動理論 / 教員養成での学び / 教員不安 / 複雑性理論 |
研究実績の概要 |
2017年度は、昨年度に引き続き、小学校内での英語指導研修システムの構築を目指し、大学(院)生を支援員として協力校へ派遣し、(a)管理職教員、(b)小学校教員、(c)大学(院)生の3者よりデータを収集し、システム構築に必要な要素の理論化に取り組んだ。その結果、システム化には活動理論が応用できること、そしてより効果的な研修における管理職の役割の重要性が明らかとなった。このように、効果的な学校内研修を理論的枠組みを基にある程度までシステム化できた研究はこれまでになく、大変意義深い。 また、教員養成志望である大学(院)生の認識の変化にも着目し、支援員として現職教員と交流を持つことで、彼らがどのような学びを得ているかを調査した。毎研修後の振り返りシートおよび事後アンケートを質的に分析したところ、学生たちは、(1)現場の状況に合わせて、研修のあり方や教師および自分たちの役割を微調整し、 (2)マクロな目標を達成するためのミクロの目標を立て、さらに(3)自分たちにとっての学びの目標も立て、それを達成していることわかった。支援員として長期間に渡り交流を持つ本研究のような試みは他に例がなく、その試みの中で学生たちの学びの過程が明らかとなったことは、とても重要であるといえる。 上述2つの調査に加えて、学校内研修と教員の不安の変動の関係性についてもアンケートおよびインタビューにより調査した。分析の結果、不安の変動には、教員個人が有する要因(教歴、英語への興味、英語力など)と、個々の置かれている状況(担任の有無、研究授業実施の有無など)が、複合的に関係していることが明らかとなった。本研究のように、質的分析を時間的経過による変動だけではなく、個人要因と状況要因の両観点から分析する方法は、昨今着目されている複雑性理論を基にしており、新しい分析方法により得られた知見として、寄与するところは大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、学校内研修のシステム化がある程度まで構築された。また、教員研修だけではなく教員養成の観点からの学びの過程も調査できた上に、教員不安の要因を時間経過に沿って動的に調査できた。そして、これらの調査結果を全国大会で発表するとともに、論文としてまとめる(査読中)に至った。 しかしながら、研修時間外に教員が各自で自己学習を進めることができる教材の有効性についても調査を試みたものの、データが十分に収集できず、実施方法も含めて再検討が必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通り、積極的な支援という足場を減らし、システムの自律性・継続性を検証する。具体的には、大学(院)生が担ってきた支援員の役割を、学校内の教員に段階的に移譲することを試み、移譲の過程での教員および大学(院)生の学びや認識、情意の変動などを調査する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に使用予定であった教材の開発・印刷が、計画段階よりも安価に抑えられた上に、研究協力校内での研修回数が、協力校の都合で予定よりも少なく、人件費や旅費が計上額よりも少ない使用となったため。 次年度は、本研究課題における最終年度となるため、研究成果の報告をするための学会参加旅費や成果物の印刷(英文校正費用を含む)での使用を予定している。また、研修外で教員が使用できる教材の開発・印刷にも使用したい。
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