研究課題/領域番号 |
16K02994
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
谷 昭佳 東京大学, 史料編纂所, 技術専門職員 (70532670)
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研究分担者 |
保谷 徹 東京大学, 史料編纂所, 教授 (60195518)
箱石 大 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (60251477)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 日本史 / 史料研究 / 古写真史料学 / 写真史 / 画像保存 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き日本を記録した湿板写真ガラス原板と関連資料の悉皆的な調査より写真史料学的な研究の推進をはかった。本年度は主に以下の調査研究と研究成果の公表を行った。 1)オーストリア所在ガラス原板コレクションの調査・研究・出版:7月、オーストリアへ出張し、オーストリア国立図書館所蔵ブルガーコレクション、アルフレッド・モーザー氏所蔵史料、バートアウスゼー市カンマーホフ博物館所蔵モーザーコレクションの撮影調査を実施した。撮影数は計1036カット。この両コレクションの調査・研究成果をとりまとめ、プロジェクト編による写真史料集『高精細画像で甦る150年前の幕末・明治初期日本―ブルガー&モーザーのガラス原板写真コレクション―』を3月に刊行した。 2)東京国立博物館所蔵湿板写真ガラス原板の調査・研究・展示会:8月、東京国立博物館に出張し、壬申検査関係の湿板写真ガラス原板の高精細撮影を行った。撮影数は498カット。撮影したデジタルデータから新たにプリントを作製し、2月27日~3月22日に東京大学史料編纂所展示ホールにおいて、同所附属画像史料解析センターPJおよび一般共同研究に協力し展覧会を開催した。 3)イギリス所在ガラス原板コレクションの調査・研究:1月~3月、イギリスへ出張し、日本関係写真の所在調査と研究を行った。ビクトリア アンド アルバート博物館において、スイス人写真家ピエール・ロシエ制作による、開港直後の日本を写したオリジナルの湿板写真ガラス原板ネガのコレクションを発見した。その成果は、4月4日の読売新聞朝刊で報道された。 4)研究集会の開催:7月15日、東京大学史料編纂所附属画像史料解析センターとの共催により、フランス国立保存研究センター所長(パリ自然史博物館・教授併任)ベルトラン・ラヴェドリン氏を招聘し、公開研究集会「写真資料の保存と学術資源化をめぐって」を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中心的課題である、オーストリアの写真家ヴィルヘルム・ブルガーとその弟子のミヒャエル・モーザーのガラス原板コレクションの画像解析を推し進め、写真史料集『高精細画像で甦る150年前の幕末・明治初期日本―ブルガー&モーザーのガラス原板写真コレクション―』を刊行し、幕末・明治初期日本の写真画像の公開による研究資源化を図ることができている。 また、東京国立博物館所蔵ガラス原板について、高精細デジタルカメラによる透過光と反射光による撮影調査を着実に遂行することができている。その成果を「『壬申検査関係写真』展-東京国立博物館所蔵湿板写真ガラス原板に関する研究成果より―」と題する展覧会にまとめ、広く一般に公表することで研究課題に掲げている歴史資料としての利活用を図ることができている。 その他、紀州郷士菊池海荘家の湿板写真ガラス原板を含む古写真コレクションおよび古文書の整理、撮影調査と目録作成。ガラス乾板を含む徳川宗家古写真コレクションの調査・撮影・データ整理。イギリスのビクトリア アンド アルバート博物館における調査において、スイス人写真家ピエール・ロシエ制作による、開港直後の日本を写したオリジナルの湿板写真ガラス原板ネガのコレクションを発見するなど、写真原板に関連する調査研究を推し進めるこことができている。 当該年度までの研究課題として掲げた諸課題について着実に研究成果を上げており、研究計画に即して順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、引き続き日本を記録した湿板写真ガラス原板と関連資料の悉皆的な調査を国内外で行うと同時に、前年度までの調査結果を踏まえて、研究成果の公開・発信に向けた取り組みを推し進める。 前年度後半にイギリス・ロンドンで発見した、幕末期に来日して日本を撮影し、いち早く西洋に日本を紹介したスイス人写真家ピエール・ロシエが制作したオリジナルのコロジオン湿板ガラス写真ネガコレクションに関する、詳細な調査研究を行う。コレクションから新たに判明したロシエ独自のステレオタイプ写真技術、またロシエが日本に至るまでの動静をオリジナルのネガに残された様々な痕跡と当時の関係史料から考察し、日本人に写真技術を教え、日本の写真文化受容に大きな影響を与えたロシエの活動を明らかにする。 国内では、今秋に予定されている国立東京国立博物館における「壬申検査関係写真」の展示に向けた画像データの整備を進める。 また、1869(明治2)年に来日したオーストリア・ハンガリー帝国東アジア遠征隊の写真家ヴィルヘルム・ブルガーとその弟子のミヒャエル・モーザーのガラス原板コレクションの研究資源化について、高精細デジタルデータからの写真プリントの復元と展示方法に関する調査研究を行う。これにより、2019年に予定される日本・オーストリア修好150年記念事業において、研究成果の公開と利活用が円滑に図られる方策を確立させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本年度の研究を遂行するなかで、幕末に開港と同時に来日したスイス人写真家のピエール・ロシエが制作したオリジナルの湿板写真ガラス原板を新たに発見するに至った。発見の一報は新聞全国紙朝刊で報じられるなど社会的関心も高く、また様々な分野からの画像の利用が期待されている。しかし、現状のガラス原板の保存方法には問題があることから、次年度前半にイギリスに出張し、ガラス原板の調査研究と同時に保存処置を早急に行うことを計画したことによる。 (使用計画) 次年度前半にイギリスに出張し、スイス人写真家のピエール・ロシエが制作した湿板写真ガラス原板の高精細撮影と技法調査および保存処置を行うための旅費の一部として使用することを計画している。
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