本年度は、当研究課題に関する先行研究文献および基礎的史料の収集と分析に重点を置き、主にオスマン帝国側とロシア帝国側の黒海地域支配・進出に関する一次・二次史料を国内のいくつかの大学図書館と海外で行った。特に、旧ソ連外務省編纂の外交資料集 "Внешняя политика России XIX и начала XX века: документы Российского Министерства иностранных дел"をはじめとする刊行された一次史料をある程度入手することができたため、これらの史料の分析を中心にロシアの黒海地域進出過程に関する研究を行い、オスマン帝国のクリミア支配と18世紀後半のロシアのクリミア進出過程の一端を明らかにした。そしてその成果を、ギリシアのテッサロニキで行われた黒海近代史関連の国際シンポジウム "3rd International Congress of Pontic Studies"(於:アリストテレス大学)において報告した。その他、オスマン帝国の黒海東岸地域支配とロシアのカフカース進出過程を明らかにすべくグルジア(ジョージア)のトビリシで史料調査を行い、関連する文献を入手した。 この他の成果として、2017年1月に刊行された『黒海地域の国際関係』(六鹿茂夫編著、名古屋大学出版会)において、第1章「黒海国際関係の歴史的展開――20世紀初頭まで」を執筆し、本研究の成果をも取り込みつつ、古代から第一次世界大戦までの黒海地域の国際関係を概観した。
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