研究実績の概要 |
今年度はフランスとハプスブルク君主国を中心とする西欧諸国の黒海地域への進出過程とオスマン帝国の付庸国支配への影響に関する分析に重点を置き、研究を行った。
当初の予定通り、ウィーンにある国立文書館のうちの一つHaus-, Hof- und Staatsarchiv、およびオーストリア国立図書館(Osterreichische Nationalbibliothek)において、ハプスブルク帝国の対ワラキア・モルドヴァ政策や18世紀後半の黒海交易参入などを中心とする当研究課題関連史料を調査し、一定の成果を得た。こうして収集した一次・二次史料に加え、刊行されているフランスの外交史料集やその他をも用いて、18世紀の西欧列強の黒海地域進出の中で大きな地位を占めていたドナウ川沿岸のワラキアへの勢力拡大に焦点を当てて研究を進め、秋にはコソヴォ共和国のプリシュティナ大学において開催された国際学会7th International Balkan Annual Conference(IBAC)において、18世紀末~19世紀初頭のフランスのブカレストへの領事館設置問題に関する報告を行った。なお、当初予定していたフランス外務省外交文書館でのフランス外交史料調査は、予算の関係上次年度に行うことになった。
この他に、昨年度以来進めている、ロシアとオスマン帝国の間のクリム・ハーン国をめぐる問題に関しても研究を継続し、その成果は英語論文として近日出版される予定である。
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