研究実績の概要 |
今年度も昨年度に引き続き、18世紀後半におけるハプスブルク君主国とフランスの黒海地域への進出過程を明らかにすべく史料調査を行った。主たる対象は、オスマン帝国の付庸国であるワラキアとモルドヴァであり、前者については、オーストリアのHaus-, Hof- und Staatsarchivにおいて両公国の領事関係史料を調査し、後者については、パリのフランス外務省附属外交史料館にて、18世紀末のコンスタンティノープル駐在大使やブカレスト駐在総領事の報告を中心とする史料群を調査した。時間的制約もあり、特に後者に関して、必要と思われる史料を十分には得られてはいないため、今後も調査を継続する予定である。
これらの西欧諸国側の黒海地域進出過程に関する調査とともに、オスマン帝国とロシア側の対応についての調査にも着手した。イスタンブルのイスラーム研究センター(ISAM)図書館において、最新の二次文献を収集し、さらにモスクワのロシア外務省附属ロシア帝国外交史料館(AVPRI)にて、1780年代のワラキア・モルドヴァ駐在ロシア領事の本国宛て報告をいくつかを参照することができた。
成果の発表に関しては、前年度に行ったクリム・ハーン国をめぐる1774年キュチュク・カイナルジャ条約後のロシア=オスマン外交関係に関する論考が刊行された。また、バトゥミのショタ・ルスタヴェリ大学で開催された学会において、本課題の成果の一部を含む、日本における黒海地域研究に関する報告を行った。
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