研究成果の概要 |
二十世紀初頭、いわゆる「有色」船員は、欧州の蒸気船にとってグローバル化する海事労働市場の一部となった。本研究では,東アフリカからのエンジンクルーの募集,航海および民族構成を調査した。特にソマリア人の船員は石炭を蒸気機関に押し込む火夫として雇われた。 調査によると、ソマリア人は英国の不定期船のエンジンクルーの労働市場でニッチを占めていた。ソマリアの船員がこの市場で雇用される傾向は、雇用主による民族的偏見をある程度反映していた。しかし、ソマリアの船員は彼らの出自に縛られなかった。スエズ運河を通ってアジアに入るルートだけでなく、南北大西洋でも民族的に多様なクルーの一員として活動しました。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
従来「有色人種」船員の機関士は,インドのラスカール船員の研究としてのみ注目されてきた。しかし,アジアの他の地域やアフリカの船員もまた,ヨーロッパの海上労働市場に参入していた。本研究は,グローバル化するヨーロッパの交易における東アフリカ出身の機関士に焦点を合わせることで,グローバル化する労働市場における民族性の役割と個人の主体的活動の重要性を明らかにするものである。英仏独の船会社は,スエズ運河を介してアフリカとアジアに向かう航路を運航していた。1920~30年代には日本人船員も現れており,日本にとっても関係の深いテーマである。資料としては、英仏独の政府や自治体の記録、航海日誌等を幅広く用いた。
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