研究課題/領域番号 |
16K03002
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
前田 弘毅 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (90374701)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | コーカサス / ジョージア / アルメニア / イラン / 通訳官 / ミドルマン |
研究実績の概要 |
2019年度は、本課題発展のために取得している国際共同研究強化科研によって可能になった海外長期研究滞在の成果と連動する形で研究を進めた。ジョージア国滞在時には主に写本センター所蔵のジョージアとイラン関係史の史料講読に取り組んだ。異なる政治体制や社会を架橋することにより、彼らが示す複雑なアイデンティティの問題、宗教観などについて検討を行った。また、この問題について現地の研究者との積極的な意見交換も行った。現地の東洋学者との共同研究や報告の準備などの作業が進展した。アメリカ滞在時には、イラン・ディアスポラとアイデンティティの問題について、様々なセミナー等に参加することで本研究課題を進めていく上での概念設定などに大きな刺激を得ることが出来た。研究文献についての知識や情報についても同様である。また、コーカサス/カフカースという地域像について、内側から見た視点、外側から見た視点についてより知見が増した。これは、この二つの視点の間を動いていたミドルマンの役割を考える上で極めて重要と考える。このほか、隣国アゼルバイジャンの近代史に関する研究について書評を執筆するなど、ジョージア/グルジアに留まらず、コーカサス地域全体の捉え直しという課題にも取り組んだ。すなわち、内側の複眼性の問題を考える上で、コーカサスという地域の独特な歴史環境について再考した。他地域の事例についてもこうした「内的複眼性」への視点を強調する必要があると考えるが、これは本研究の一つの成果ともいえるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体として、研究は順調に進展しているものの、近世時代の分析に多くの時間を割いたために、近代以降についての検討が未だ十分に果たされていない。また、新型コロナウイルス感染症蔓延に伴う社会情勢の急変に在外研究が影響を受けたこともあり、研究のとりまとめや成果の執筆などについてもう一度スケジュールを確認する必要がある。これまでに収集した史資料の整理を急いで情報を集約し、研究のまとめの作業をしっかり行っていく必要がある。とりわけエニコロピアン家係累の帝国をつなぐ役割など、より詳しく探求することで見えてくる歴史像を検討していかなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
今後、研究成果をとりまとめるにあたって、英語による研究発表や論文の執筆の機会を増やす必要がある。また、地域をつなぐ役割について検討してきたが、地域そのものの複眼性についてもう一歩踏み込んで研究を進めていくことが必要である。この作業により、研究の奥行きをさらに深めることが可能であると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
在外研究期間が長かったことにより、研究資料の将来が予定より遅れている。また、新型コロナウイルス蔓延により、資料収集と研究者との意見交換の機会が著しく制限されたことが影響している。
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