平成30年度は、青森・秋田・岩手県を中心とした形で調査・研究活動を実施した。第一には、秋田城跡・払田柵遺跡を中心に秋田県内の城柵および関連遺跡の現地調査と出土資料の検討をおこない、当該地域の地域的特色と絡めながら、豊富な木簡・漆紙文書について知見を深めることができた。また青森県域では八戸周辺地域の遺跡群や博物館等や末期古墳の現地調査をおこない、現地の地理的環境等を確認するとともに関連文献の収集をおこなうことができた。 岩手県域については、『北上市史』編纂にともなう調査に参加する機会に恵まれ、これにあわせて北上市および周辺地域の遺跡等の踏査確認および出土文字史料を実見する機会を得、墨書土器などの調査をおこなうことができた。またこれにともなう論文等の収集・分析につとめた。 研究発表としては、前年度までの研究成果をもとに、伊治城と北上川中流域の山道エミシとの関係をテーマとした論文「三十八年戦争と伊治城」を『古代東北の地域像と城柵』(高志書院)に収録する形で発表することができた。さらにその成果をふまえ、古代陸奥国の城柵と在地豪族の関係について、交通路との関連をも意識して検討をおこない、その成果を第45回古代城柵官衙遺跡検討会で報告することができた。さらに新書ではあるが佐藤信編『古代史講義 戦乱篇』において三十八年戦争の推移と研究課題について執筆する機会をえた。これにくわえ、東北の事例とは異なるものの、地域間関係を考える際の基礎となる交通関係の出土文字史料が豊富に出土している静岡県浜松市伊場遺跡の資料群について検討して交通関係の出土文字資料の分析視角について見通しを提示し、その成果を木簡学会特別研究集会で報告すると共に、同学会の機関誌に発表した。
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