1.本年度は研究報告会を3回開催することができた。第1回目は、佐藤全敏「国風文化研究会 これまでの議論 ―2016~2017年度の整理―」、渡辺秀夫「唐文化の国風化 ―王朝漢詩《句題詩》の成立をめぐって」。佐藤報告は2年間の研究成果を整理し、新たな課題の設定を行うもの。渡辺報告は「漢詩の和歌化」と評される「句題詩」の成立背後に「唐代」の指南書があることを発見し、その実証過程を報告するもの。これにより、これまで諸ジャンルで指摘されていたことが、漢詩文の世界においても明瞭に指摘されることとなった。第2回目は、佐藤全敏「9・10世紀における朝廷のなかの倭歌」。これは、9世紀において倭歌がどこで詠まれ、その空間がどのように拡張していったかを歴史学的手法により明らかにするもの。文学的営為が行われる空間の歴史的変遷を検討し、歴史学・国文学・漢文学の間で新しい共通認識が得られた。第3回目は塚本麿充「北宋宮廷文化の場所と日本」、横内裕人「平安時代における天竺観の変遷」。両氏はそれぞれ2017・2018年度の途中から恒常的なゲストスピーカーとして参加してくださるようになっていたが、この回はその両氏による研究報告。摂関期と同時代の北宋における文物管理のあり方や、仏教史における国風化のありさまを具体的に紹介していただくとともに、北宋と日本との比較、あるいは日本仏教の変化と日本国内の他分野の変化との比較を行う議論を行い、それぞれ重要な発見があった。 なお中国上海在住の李宇玲氏(研究協力者)が、Skype利用により、基本的に全ての研究報告会の議論に参加しており、国際的な研究集会となっている。
2.このほか「醍醐天皇日記」「村上天皇日記」の逸文の校合作業を継続した。
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