本研究の目的は、鎌倉時代史の基本的文献である『平戸記』に関して、信頼に足るような新たな校訂本を作成し、研究の基盤整備を行うことにある。最終度にあたる令和元年度には、校訂作業を推進するとともに、前年度より着手した人名・地名の比定作業および人名索引の作成、各記事を端的に要約して示すような標出の作成、といった作業を遂行した。 前年度、研究協力者など8名で構成される研究組織を、校訂、人名・地名の比定、標出の作成、といった3つの部門に分け、それぞれが担当の作業を行うこととしたが、今年度もそれを継続して実施した。作業分担を明確にしたことから、全員が集まって議論をするという回数は減り、今年度開催した会合は1回のみであった。会合では、各担当部分の進捗状況の確認や、作業を遂行する上で発生した諸問題の検討などを行った。また、当初の研究計画では、『平戸記』全体について新訂本を作成することとしていたが、より完成度の高い内容にすることを目的に、前年度までの作業成果を援用しながら、前半部(延応2年正月から寛元2年3月まで)に焦点を絞った形で新訂本を作成することとした。 校訂作業については、『平戸記』の前半部について、諸本間の相違点の抽出や校訂注の作成を終えることができた。その上で、校訂の最終的な点検作業を行った。人名・地名比定作業については、日次記全体から人名・地名を抽出し、比定作業を順次行った。前年度中に一通りの比定を終えており、今年度はその確認作業や、原稿への挿入作業を実施した。標出作成作業についても、『平戸記』の前半部に関して終えることができた。その上で、標出の文字数や表現を調整しながら、点検作業を行った。
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