引き続き内乱期の諸相に詳しい当時の貴族の日記類を精読した。また本年度は史料的な価値は劣るけれど、『吾妻鏡』や『平家物語』読み本系諸本を集中的に読みこんだ。内乱期の各種災害を知るためには、『方丈記』は極めて有益である。これも貴族の日記類などとつきあわせながら、歴史学の視点で注意深く検討し、その深刻な状況を明らかにし得た。 また2019年5月25日には、東京に出張し、古代中世地震史料研究会文献部会、翌26日には歴史学研究会大会中世史部会に参加し、報告と討論に加わった。前者は歴史地震に詳しい日本中世史と歴史地震学の研究者が参加している研究会で、とりわけ歴史地震学の方法から多くを学んだ。 荘園の現地調査では、2019年11月15~18日に、平安末内乱期に活躍する豊後の豪族緖方惟栄の足跡を明らかにするため、彼の本拠である緖方荘の故地、大分県豊後大野市・竹田市一帯を踏査し、平安末開発の実態や用水路について新知見を得た。その際、現地に詳しい豊後高田市教育委員会の松本卓也氏の指導助言を仰いだ。 2020年2月27~28日には、平安末内乱期に活躍する熊野別当湛増の本拠地である和歌山県田辺市を踏査し、郷土史の成果を学び、湛増の本宅の立地場所を確認できた。 これらを加え2016年以来の研究成果を取りまとめ、治承・寿永内乱と飢饉・災害の関係について、具体的に文章化を開始した。現在400字詰原稿用紙約120枚を書き終わっている。新型コロナウイルスの流行による神戸大学大学図書館の閉館によって、必要な文献や史料が手に入りにくくなったので細部の詰めができていない部分もあるが、引き続き執筆を進め、図書館の利用が可能になれば完成につとめる。
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