研究課題/領域番号 |
16K03013
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
坂江 渉 神戸大学, 人文学研究科, 非常勤講師 (00221995)
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研究分担者 |
古市 晃 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (00344375)
高橋 明裕 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (90441419)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 風土記 / 荒ぶる神 / 祟り神 / 口承 / 始祖伝承 / 祭祀 / 王権 / 地域編成 |
研究実績の概要 |
本研究は、各国風土記(逸文を含む)にみえる「荒ぶる神」の鎮祭伝承に焦点をしぼり、現地調査を踏まえた分析をおこなうことにより、古代国家形成期の広域権力や倭王権による地域編成のあり方の具体的解明をめざす点にある。研究の最終年度は、合同現地調査と研究会を各4回、各自が個々の資料調査を数回ずつ、また学会発表を3回、科研調査の成果発表シンポジウムを1回実施した。その成果は以下の通りである。 (地域社会研究チーム) 研究代表者の坂江渉が、①各地で「荒ぶる神」祭祀を司った一族は、自発的に移住してきたのではなく、倭王権や広域的権力によって、戦略上・物流上の要地に向けて計画的に派遣されたと考えられ、その時期はおおむね6世紀半ば以降であること、②その前提には、朝鮮半島における対外的危機が横たわっていたこと、などを明らかにした。これらの成果を、4回の研究会と『島根県古代文化センター研究論集』22などに公表した。さらに坂江は、③現地調査を通じて、「荒ぶる神」の伝承比定地では多くの場合、地方寺院の痕跡(廃寺・瓦散布地・肥前国の橋寺など)を見いだせることに気づき、その成果を第29回出雲古代史研究会で報告した。研究分担者の高橋明裕は、神話・伝承の分析を通じて、5~6世紀の播磨の地域勢力の交替を分析し、その成果を「伊和大神信仰の諸相」として発表した。 (氏族研究チーム) 研究分担者の古市晃は、従来の研究蓄積を踏まえつつ、『古事記』『日本書紀』及び『播磨国風土記』などの氏族伝承にもとづき、5~6世紀の倭王権の地域支配のあり方について、総合的な解明を試みた。その成果を1冊の本としてまとめ上げた(『国家形成期の王宮と地域社会』。 今後、「荒ぶる神」の伝承比定地のような、交通の難所でかつ軍事的・経済的な要地において、神祭りの場と仏教寺院が並存する理由を明らかにすることが、大きな研究課題として浮かび上がってきた。
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