研究課題/領域番号 |
16K03014
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
河上 麻由子 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (50647873)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 天下 / 都城 / 仁寿舎利塔 / 阿育王 / 転輪聖王 |
研究実績の概要 |
今年度は、中国の王権や世界認識が仏教により変化・拡大する過程を検討することで、古代の天下を考える視座をえることを試みた。具体的には、4世紀に皇帝を如来として以来、王権と仏教の関係は北魏がリードした。中国史上最も有名な崇仏皇帝である梁武帝の崇仏も、宣武帝による新たな崇仏事業をモデルにしていたと考えられる。北朝の模倣から始まった梁武帝の崇仏は、捨身(師子国王の模倣)を経て独自に展開した。梁武帝に模倣される南朝の皇帝が菩薩になったのは、東南アジアの影響と考えるべきである。梁とアジア諸国の交渉にまで仏教が影響を及ぼすようになると、今度は北魏が仏教による対外的影響力を拡大するなど、南北朝間で従来指摘されていた以上に仏教をめぐる競争関係にあったことを論じた(「南北朝時代の王権と仏教―アジア史からみたー」〈第19回魏晋南北朝史研究会「魏晋南北朝史と東部ユーラシア」、2019年9月14日、於東京大学〉「Disintegrating Empire, Reconstituting Culture」〈「Beliefs and Cultural Flows of East Asia in the Late Antiquity and Medieval Period」, 2019年10月16日、於College de France〉)。 また、中国で王権と仏教の関係が変化したことが、東アジアに与えた影響についても朝鮮半島を中心に考察した(「東アジアの転輪聖王」〈韓国木簡学会、2019年11月2日、於漢城百済博物館〉)。 なお、18年度に共催した「都城制研究集会」国際シンポジウムの成果として、日本・韓国・ベトナムの研究者から論文を提供してもらい、天下と途上について考察する論考をまとめた雑誌として発刊することができた(「日本古代の『天下』と都城」『都城制研究』14号)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究自体は進展していると考える。ただしシンポジウム参加にあたり、すべて原稿を準備し先方に提出したが、それらの発行が遅れているため、論文として十分な成果を出すことができていない。よって「概ね順調に進展している」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、国内調査と海外調査、また国内外で開催される国際学会での報告により、研究課題の最終的なまとめを行うつもりでいた。しかし、コロナウイルスの影響で全ての調査を延期、学会はほぼ全て中止となっている。せめて国内調査が可能になることを祈るばかりである。2020年度の調査が全く不可能である場合を見据え、文献の研究対象を拡大することで、計画を遂行できるよう可能な限り努力したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
採用期間中、発病により休職した時期があり、研究遂行に支障が出た。そのため、当該年度にて研究費の使用額が計画と大きく食い違うことになった。今年度については、経費遂行はさほど齟齬は生じていないと考える。
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