研究課題
本課題の最終年度にあたる平成30年度には、これまで作成した熱田本『日本書紀』の高精細影印本をもとに、さらに熱田本の研究を推進した。熱田本『日本書紀』の特徴としては、①和歌懐紙を利用して紙背に『日本書紀』を書写していること、②時宗僧の信仰のネットワークを通じて熱田神宮に奉納されたこと、があげられる。熱田本『日本書紀』は、14世紀に生きた人びとにとっても信仰・学術の結晶であり、これを多角的に分析することによって、時代を越えて受け継がれた書物と人との対話を明らかにすることができた。今年度の研究では、和歌懐紙の利用・時宗僧による寄進といった、他の『日本書紀』写本ではみられない熱田本独自の要素を詳細に分析するよう努めた。また、いっぽうで、『日本書紀』の写本系統のなかで、熱田本の占める位置についても分析を勧めたが、こちらは奥書が巻9にしかないこともあって、いかなる親本を書写したものかを全巻についてたしかめることは困難であった。しかしながら、全体としては、実際の写本を対象として日本古代史・中世史はもとより、日本文学・日本語学の領域を越えた人文科学の総合研究として、熱田本を多角的に分析することができたのは大きな収穫であった。所蔵者・熱田神宮の理解と協力を得て、熱田本という貴重な文化遺産を広く活用できる基盤を作り、学術上の要望に応えたことは、原本の保存・管理を目指すことは、われわれの大きな悦びとするところである。
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古事記学
巻: 5 ページ: 103,125
『日本書紀』の誕生
巻: 1 ページ: 3,25
古典と歴史
巻: 1 ページ: 1,53
皇學館史学
巻: 35 ページ: 31,60