本研究の成果は、荘園領主である権門寺院の資金繰りの内容と金融構造を明らかにしたことである。都市に集住する荘園領主の出費は一年中存在するのに対し、彼等の収入は、秋の収穫期以降に送進されてくる荘園年貢が中心であり、彼等の財政構造には季節性のギャップが存在する。このギャップを埋めるためには、権門寺院では年貢収入を、組織の内部に寺官層の財産という形で蓄積し、出費を立て替えさせていた。財務に明るい寺官層が、収納の実務を通じて財産を蓄積し、その財産で東寺の荘園領主としての出費を立て替え、そして秋の年貢から利息をつけて彼等に返済する、という形で、蓄積を再生産するという構造をとっていたのである。
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