本年度の研究は、まず昨年度おこなった艦船外国発注とそれに関連する技術導入の過程についての研究作業を完結させるため、論文「1883年度以降の軍備拡張計画に基づく日本海軍の艦船輸入について(下)」(『人文社会科学論叢』第5号、2018年8月)を取りまとめて公表した。 それと並行して、『社会経済史学』編集委員会より千田武志著『呉海軍工廠の形成』(錦正社、2018年)の書評を依頼され、執筆した。既に原稿は提出済である。2019年度中に掲載される予定という連絡を受けているが、その巻号は未定である。同書と本研究とは、視角や方法においてかなりの違いがあるものの、その対象領域は重複するところがかなりあり、とくに同書の丹念な史資料収集に基づく実証分析はとても参考になった。同書の指摘によって、鹿児島県立図書館に赴いて収集した川村純義の追懐談は、同書の主張とは異なり、むしろ本研究の従来の主張を補強することになったと考えている。その他に、この書評を執筆することによって、本研究の重要課題や論点を再確認できるというメリットもあった。 また、本年度は軍拡計画の中断期(1889-95年)における国内・国外の艦船建造構想とその実施過程を検討することによって、日清戦争後の拡大された軍拡計画と最初の軍拡計画の相違と関連を考察することができた。この作業はまだ完結しておらず、期間中に成果を公表することができなかったが、著作として刊行することを目指している。
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