研究課題/領域番号 |
16K03044
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高木 博志 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (30202146)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 即位 / 陵墓 / 葬儀 / 大嘗祭 / 顕彰 / 京都 |
研究実績の概要 |
平成28年度には、本課題にかかわり、「近代皇室における仏教信仰」(『祭祀研究と日本文化』塙書房所収)の論考で、1895年の明宮(はるのみや)への泉涌寺における病気平癒の祈祷の事実を解明した。それは明治維新後も東京の宮中で仏教信仰が継続していたことの証であるが、天皇代替わりにかかわり、近世の葬儀・墓所のある泉涌寺の役割が、近代においても大きな意味を持っていたことの論証ともなった。今年度のもう一つの大きな仕事は、共編著として『世界遺産と天皇陵古墳を問う』(思文閣出版)を上梓したことである。本書は、古代から近代までの天皇陵の変遷と、「大山古墳」ではなく「仁徳天皇陵古墳」として世界遺産登録されることを学問的に再検討したものである。同書のなかで、私は大正期の「継体天皇陵」の治定をめぐる学問的論争をとりあげた。6世紀の継体大王の王墓が、今城塚古墳であることが、文献史学で論証にもかかわらず、太田茶臼山古墳の治定は変わらなかった。陵墓問題の歴史的検討は、葬儀―即位―大嘗祭と流れる、一連の儀式の検討とも密接にかかわっている。そのほか、伊勢神宮への修学旅行についての論考を書いた。 平成28年度は、代表者が夏に長期のドイツへの出張があり、十分な調査ができなかったが、宮内公文書館や国会図書館憲政資料室で、恭明宮や南朝の遺跡、皇子墓、明治10年行幸、代替わり関係の資料を博捜した。また皇室をめぐる政治・文化・儀礼などの文献や資料を購入した。 またハイデルベルク大学やライプツッヒ大学で、近代皇室と奈良や京都にかかわる研究報告をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天皇代替わり儀式とともに、陵墓や泉涌寺をめぐる葬儀の研究に重点をおいた。そして皇室をめぐる歴史顕彰のなかで、陵墓や歴史上の功臣の問題にも関心を広げている。さらに教派神道と皇室の神道との、儀礼や教義の比較にも研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、葬儀や陵墓を中心とした天皇代替わり儀礼の研究に取り組むとともに、神武陵や皇族墓、あるいは南朝の功臣や忠義烈士の近代における顕彰の問題にも取り組みたい。1928年の昭和大礼は明治維新の60年祭にあたっており、代替わり儀式の大きな転換に、いかに歴史の顕彰がおこなわれたか、イェール大学で報告する予定である。また富岡鉄斎の歴史顕彰や皇室への崇敬の問題を近代史に位置づけたり、教派神道と国家神道との教義や儀礼の比較研究にも取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ドイツへの長期出張のため、出張回数が減り残額を残した。
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次年度使用額の使用計画 |
写真撮影や資料購入の経費を増やすなどして使用計画を見直すとともに、代替わりや皇室にかかわる歴史顕彰や、儀礼の比較史などにも研究課題を広げていきたい。
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