研究実績の概要 |
今年度は役職のため、十分な研究実績を上げることができず、一年間、研究期間を延長して、調査、研究に励みたい。研究成果としては、編著として京都大学人文科学研究所共同研究報告『近代天皇制と社会』(思文閣出版、10月)を刊行し、において、20世紀に天皇制が社会に浸透していく過程を明らかにした。また「明治維新50年、60年の記憶と顕彰―1917年、1928年の政治文化」(ダニエル・V・ボツマン他編『「明治一五〇年」で考える:近代移行期の社会と空間』 山川出版社、11月)と、同名の英語論文、The 50th and 60th Anniversaries of the Meiji Restoration― Memory, Commemoration and Political Culture in the Pre-War Perood , Japanese Studies ( Taylor&Francis Online), Volume38,December 2018,において、明治維新を経験した世代が集団としていなくなる20世紀において、明治維新をめぐる歴史意識がいかに浸透するかを考えた。ここでは1928年の昭和大礼を契機に、明治維新の顕彰が始まる問題を論証した。歴史画から明治維新観を考えた研究成果に、「小波魚青「戊辰之役之図」と明治維新観」(並木誠士編『近代京都の美術工芸―制作・流通・観賞』思文閣出版 3月)がある。「天皇制の聖地の形成」(都市史学会編『日本都市史・建築史事典』丸善出版 11月)では、大礼の場である京都御所の近世から近現代への変遷、代替わりに勅使が発遣される伊勢神宮や神武天皇陵の聖地形成を論じた。京都府立京都学・歴彩館、京都市歴史資料館や奈良・京都の社寺を中心に昭和大礼や皇室関係の調査を行った。また近代の大嘗祭や陵墓の意味づけが、国民道徳とかかわって展開したことを、大阪の歴史学入門講座で報告した。
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